「業務委託」と「雇用契約」、その違いとは? 個人が職人さんに発注する際に知っておきたい基礎知識

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画像:Canvaにて作成

住宅リフォームを考えるとき、工務店やリフォーム会社に依頼するだけでなく、個人が直接職人さんに仕事を頼むという方法もあります。

この方法には、コストパフォーマンスの良さや自由なリフォームができるといったメリットがある一方で、契約方法に注意が必要です。

特に知っておきたいのが「業務委託」と「雇用契約」の違い。
契約形態を誤解していると、トラブルや不利益につながることも…。

この記事では…、
  • 業務委託と雇用契約の基本的な違い
  • それぞれの契約が仕事や責任にどう影響するか
  • 個人発注時に気をつけたいポイント
  • 口頭契約のリスクと書面契約の重要性
  • 雇用契約とみなされるリスクとその対策

についてわかりやすくまとめて解説していきます。ぜひご参考になさってくださいね。

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1. 「業務委託契約」とは?〜自由度は高いが、自己責任も伴う〜

業務委託契約とは…、
  • 特定の作業や成果物を、外部の職人さんにお願いする契約のこと

業務委託契約とは、企業や個人(発注者)が、特定の業務の遂行を外部の企業や個人(受託者)に委託する契約のことです。そして、リフォームの現場で多く使われるのがこの業務委託契約です。

業務委託契約のポイントは…、
  • 作業の方法・時間配分は職人さんに任せる
  • 指示や管理は最低限にとどめる
  • 成果物に対して責任を負う(特に請負契約)

つまり、「お任せするけど、完成責任は負ってね」という関係になります。

例えば、あなたが「キッチンリフォーム」を依頼したとします。
「新しいシステムキッチンを設置する」ことをゴールに、

  • どんな順番で
  • どんな工具を使い
  • 何日かけるか

こういったことは、基本的に職人さんに裁量があります。

ただし!完成品が契約通りでなければ、やり直しを求めることもできる。これが業務委託契約(請負契約型)の特徴となります。

2. 「雇用契約」とは?〜指示を出せる代わりに、労働者として守る〜

雇用契約とは…、
  • 人を雇って、雇用主の指示のもとで働いてもらう契約のこと

一方、雇用契約は、職人さんを社員やアルバイトのように雇う契約となります。
あなた(発注者)が仕事の進め方、使用する材料、勤務時間などを細かく指示できる反面、
社会保険の加入義務や、労働災害時の補償など、労働法上の責任が発生します。

たとえば、職人さんに…、

「朝9時に現場集合、17時まで働いて、昼休憩は12時から1時間」

などと細かく指示をした場合…、これは業務委託ではなく雇用とみなされる可能性が高くなるので注意が必要です。

雇用とみなされた場合には、

  • 最低賃金を守る
  • 社会保険に入れる
  • 残業代を支払う

といった義務も発生してきます。個人発注ではここまで対応できないことが多いため、基本的には業務委託契約を結ぶのが現実的なんですね!

3.業務委託契約と雇用契約それぞれのメリット・デメリットや違いまとめ

ここまで説明してきた「業務委託契約」と「雇用契約」ですが、違いをイメージしきれない人もいるかもしれません。

ここでは、それぞれの契約方法のメリット・デメリットをまとめ、主な違いを一目でわかるよう表にまとめました。

・業務委託契約のメリット・デメリット

業務委託契約とは、「特定の業務を達成すること」を目的に結ぶ契約で、仕事の進め方は本人に任され、成果物に対して報酬が支払われます。

業務委託契約の主なメリット・デメリットを以下にまとめます。

【業務委託契約のメリット】
  • 成果物が明確なので、発注側・受注側ともにゴールがはっきりしている
  • 仕事の進め方に自由度があり、柔軟な働き方が可能
  • 雇用リスク(社会保険料負担、労基法違反リスクなど)が少ない
  • 繁忙期だけスポットで依頼できる
【業務委託契約のデメリット】
  • 細かい作業指示ができないため、完成品質にバラつきが出るリスクがある
  • 受注側に業務遂行能力がないと、成果物が未達になることも
  • 発注側は安全配慮義務を負わないが、契約管理の手間はかかる
  • 労働者側にとっては、成果が出ないと報酬がもらえないリスクがある

・雇用契約のメリット・デメリット

雇用契約は、「労働力そのものを提供してもらうため」に結ぶ契約です。業務内容や働き方について、細かい指示や管理が可能です。

雇用契約のメリット・デメリットを以下にまとめます。

【雇用契約のメリット】
  • 勤務時間、作業場所、作業手順などを細かく管理できる
  • 継続的に同じ人材を確保できるため、組織力を高めやすい
  • 安定した労働力提供が期待できる
【雇用契約のデメリット】
  • 社会保険・労災保険などの加入義務が発生する(コスト増)
  • 労働基準法による各種規制(残業代支払い、解雇制限など)を守る必要がある
  • 業務量にかかわらず一定の賃金支払いが必要
  • 離職や労務トラブル対応に備える必要がある

・業務委託契約と雇用契約の違いを表で確認!

ここまで業務委託契約と雇用契約の特徴やメリット・デメリットを説明してきましたが、ここでは、それぞれの違いをわかりやすく表にまとめてみました。

項目業務委託契約雇用契約
仕事の指示最低限、成果に対して指示細かい作業指示ができる
責任の範囲成果物に対する責任(請負型)作業過程に対する責任
報酬の支払い方成果報酬、作業報酬賃金(月給・日給・時給)
社会保険・労災原則、不要加入義務あり
トラブル時の扱い契約違反として民事責任労基署対応、労働紛争になる可能性

「自由度が高いが、自己責任も重い」のが業務委託「細かく管理できるが、労務リスクも背負う」のが雇用契約です。

リフォームの個人発注では、ほとんどの場合業務委託契約を結ぶことになると思いますが、この違いをしっかりと理解したうえで契約するようにしてくださいね。

4. 個人が職人さんに発注する際に特に注意すべき点〜口頭契約は危険!〜

個人が職人さんや小規模業者に依頼する際、「契約書まで作るのは大げさかな?」などと言った思いから、つい「口頭でのやり取りだけで進めてしまう」ことがあります。

しかし、これは後々大きなトラブルを招く原因になりかねません。

ここでは、なぜ口頭契約を避けるべきなのか、具体的な理由と注意点を解説していきます。

・口頭契約は「言った・言わない」の争いになりやすい

口頭だけで契約内容を取り決めると、記録が一切残らないため、トラブルが起きたときに「言った・言わない」の争いが起こる原因となります。

たとえば、次のようなケース…、

「外壁の修理も、追加料金なしでお願いできると聞いた」

「いや、それは別料金と言ったはずだ」

「完成は○月中と言っていた」

「そんな期限までは約束していない」

このようなお互いの認識のズレは、悪意がある・ないにかかわらず、記憶の曖昧さから自然に起きてしまうものですよね。

さらに、トラブルがこじれた場合、第三者(裁判所や弁護士など)に相談しても、「証拠がない限り、どちらが正しいか判断できない」とされ、自分の主張を認めてもらえないリスクが高まります。

・口頭契約でズレが生じやすいポイント

法律上、口頭でも契約は成立します。しかし、何をどう約束したかを証明できないため、
実際のトラブルでは非常に弱い立場になります。

以下、口頭契約では特に認識のズレが起こりやすいポイントをまとめましたので、ぜひ参考になさってください。

【ズレが起こりやすいポイント】
  • 支払金額・支払方法総額が違う追加料金が必要と言われた支払いのタイミングを巡る食い違いなど。
  • 作業範囲・工事内容どこまでが依頼に含まれるのか細かい作業内容の認識違い。
  • 納期・完了期限「この日までに完成する」という約束が、実は「努力目標」扱いだったなど。
  • アフターフォロー・保証「一定期間の保証がある」と思っていたのに、実際は対象外と言われる。

これらは後から取り返しがつかない問題になりやすいため、必ず書面に残しておくことが重要です。

・【重要】必ず書面やメールで「証拠を残す」

たとえ小さな案件であっても、最低限、以下のどちらかは必ず残すようにしましょう。

  • 見積書・発注書を作成し、双方で確認する
  • 少なくともメールやLINEなど、文章でやり取りしておく

これだけでも、後々のトラブル防止になります。「書面が面倒だから…」と妥協すると、最終的に大きな損害を被る可能性もあります。

小さな仕事でも必ず“証拠”を残す習慣をつけましょう!!

個人発注の場合こそ「書面でのやり取り」が大切です。「トラブルを未然に防ぐために必要なこと」と考えて、丁寧な対応を心がけていってくださいね。

5. まとめ

この記事では、個人で職人さんに発注する場合の一般的な契約形態は、業務委託契約であることをお伝えしてきました。

雇用契約と違い、「働き方の自由」がある一方で、トラブルが起きたときの自己責任の範囲が広いことが特徴です。

特に個人で職人さんに依頼する場合は、「手間がかかる、面倒だ…」などといった理由で口頭契約にすると、後々のトラブルを招きかねません。

【本記事でお伝えしたポイント】

  • 業務委託契約と雇用契約の違いを理解しよう
  • メリット・デメリットを比較し、自分に合った契約スタイルを選ぶ
  • 口頭契約は避けて、必ず書面で残すことがトラブル防止に役立つ
  • 特にズレやすい「金額・納期・工事範囲・保証」などは契約書で明記

どんなに小さな工事でも、「言った・言わない」で揉めないために、書面での確認・合意をしっかり取ることが信頼関係にもつながります。

「このくらいは言わなくても分かるだろう」という考えは捨て、相手との信頼を守るためにも、「書面・文字で記録を残すこと」を忘れないでくださいね。

(執筆者:yuffy)