「仮設工事って何?」「本当に必要なの?」「費用はいくらかかるの?」
マイホームを建てるとき、多くの方がこの「仮設工事」という言葉に戸惑います。見積書に載っている「仮設工事一式」の費用に驚いた経験はありませんか?
実は、この目立たない工程こそが、家づくりの安全と品質を支える重要な土台なのです。適切な仮設工事があってこそ、安心して住める家が完成します。
この記事を読めば、仮設工事の基本から費用相場まで把握でき、打ち合わせの際も自信を持って臨めるようになります。家づくりの見えない部分を理解して、満足度の高い住まいづくりを実現しましょう。
仮設工事とは?
仮設工事とは、その名の通り「仮の設備を設置する工事」のことです。家そのものを建てる「本体工事」を円滑に進めるための準備工事と考えるとわかりやすいでしょう。主に敷地の外周部分には仮囲いや仮設道路が設けられ、工事現場周辺には仮設トイレや資材置き場が配置されます。また、建物周囲には足場が組まれ、敷地内の適所に仮設電気や仮設水道の引込口が設置されます。これらの設備は工事完了後に取り外されるため「仮設」と呼ばれますが、工事期間中は作業員の安全確保や効率的な作業進行に欠かせないものです。
仮設工事が重要な理由
仮設工事が行われる主な理由には、以下のようなものがあります。
- 安全の確保… 作業員の安全と周辺住民の安全を守ります。適切な足場や仮囲いがないと、転落事故や資材の飛散などの危険があります。特に住宅建設では2階部分や屋根の作業が多いため、しっかりとした足場は不可欠です。
- 工事の品質向上… 電気や水道、トイレなどの基本的なインフラを整えることで、スムーズに本体工事を進められます。適切な環境があることで職人さんの集中力も高まり、細部までこだわった施工が可能になります。例えば、水道が整備されていないとコンクリートの品質にまで影響することがあります。
- 工期の安定… 仮設道路がしっかり整備されていると、雨天時でも資材搬入がスムーズに行え、工期の遅れを防ぎます。また、十分な足場があると作業効率が上がり、予定通りの工期で進められる可能性が高まります。
- 近隣トラブルの防止… 仮囲いや養生シートなどで騒音・粉塵対策をすることで、近隣とのトラブルを未然に防ぎます。また、仮設トイレを設置することで、作業員が近隣の公共トイレを使用することもなく、ご近所への配慮ができます。
本体工事だけでなく、この仮設工事の質も家づくり全体の出来栄えを左右する重要なポイントなのです。
主な仮設工事の種類
一般住宅の建設で行われる仮設工事には、主に以下の6つの工程があります。それぞれの目的や内容について詳しく見ていきましょう。
1. 仮設電気設置
仮設電気は、電動工具を使うために必要不可欠な設備です。ドリルやノコギリ、照明器具など、多くの現場作業に電力が必要となります。整地作業完了後、本格的な工事開始前に設置します。施工会社が電力会社への申請を行い、許可が下りるまで約2週間~1ヶ月かかることもあります。電気がないと工事自体が進められないため、工事計画の早い段階で手配されます。工務店によっては、初期段階では発電機を使用する場合もあります。
2. 仮設水道設置
仮設水道は、コンクリート練りや清掃作業、作業員の手洗いなど、様々な場面で必要となります。仮設電気とほぼ同時期に設置されることが多いです。施工会社が地域の水道局への申請を行い、許可が下りるまで約2週間~1ヶ月程度かかります。水道がないと作業効率が大幅に下がるだけでなく、コンクリートなどの品質にも影響する可能性があるため、適切に設置されることが重要です。
3. 仮設トイレ設置
仮設トイレは、作業員が快適に働くための最も基本的な設備の一つです。工事開始直後の早い段階で設置します。トイレが遠いと作業の中断時間が長くなり、効率が落ちます。また、近隣の公共トイレや店舗のトイレを借りることになると、トラブルの原因になることもあります。一般的には洋式の簡易トイレが設置され、定期的な清掃・消毒サービスも含めてレンタルすることが多いです。
4. 仮設道路整備
仮設道路は、大型車両や重機が敷地内に入るための通路を整備する工事です。整地作業後、本格的な工事開始前に設置します。重機や資材を運ぶトラックがスムーズに出入りできるよう、十分な幅と強度を確保します。特に雨の日でも工事を進められるよう、ぬかるみ対策は重要です。鉄板を敷いたり、砕石を敷き詰めたりして道路面を形成します。地盤が柔らかい場合や雨天時に車両が立ち往生するのを防ぐ役割も果たします。
5. 仮囲い設置
仮囲いは、工事現場と外部を区切るための囲いで、安全確保と防犯対策に役立ちます。本格的な工事開始前に設置します。工事現場への部外者の立ち入りを防止し、資材や工具の盗難を防ぎます。特に子どもの侵入防止は重要です。また、粉塵や騒音の軽減、周辺環境や景観への配慮という役割も果たします。一般的には木製パネル、鋼板、メッシュフェンスなどが使用されます。
6. 足場組立
足場は、高所での作業を安全に行うための仮設構造物です。家の外壁や屋根の工事には欠かせません。基礎工事完了後、建物の構造体の工事が始まる前に設置します。上棟から外壁・屋根工事が完了するまで(約1~1.5ヶ月)設置されます。枠組足場、単管足場、くさび足場などの種類があり、転落防止ネットや養生シートを設置することが一般的です。足場は作業員の安全を守るだけでなく、効率的に作業を進めるためにも重要です。
仮設工事の順序と期間
一般的な一戸建て住宅(建築期間約3ヶ月)における仮設工事は、以下のような順序で行われることが一般的です。
- 整地作業(1~2日)… 敷地内の不要物を撤去し、地面を平らにします
- 仮設電気・水道の申請… 施工会社が工事開始の2週間~1ヶ月前に手続きを行います
- 仮設トイレの設置(工事初日)… 作業員の環境を最初に整えます
- 仮囲い設置(工事開始直後、1~2日)… 安全確保のために早急に設置します
- 仮設道路整備(整地後、1~2日)… 資材搬入のための経路を確保します
- 仮設電気・水道の引き込み(申請から2週間~1ヶ月後)… 許可が下りたら工事します
- 足場組立(基礎工事後、2~3日)… 建物の形が見えてきたタイミングで設置します
全体としては、着工から約1週間~2週間で主要な仮設工事が完了し、本格的な建築工事に移行します。
設備ごとの使用期間
標準的な一戸建て住宅(建築期間約3ヶ月)の場合
- 仮設電気・水道… 着工から引き渡しまで(約3~4ヶ月)
- 仮設トイレ・仮囲い… 着工から建物完成まで(約3ヶ月)
- 仮設道路:… 着工から主要資材搬入完了まで(約2ヶ月)
- 足場… 上棟から外装工事完了まで(約1~1.5ヶ月)
工事の進捗状況や天候によって、これらの期間は変動する可能性があります。施工会社と具体的な工程について確認するとよいでしょう。
仮設工事の費用相場
仮設工事にかかる費用は、家の規模や敷地条件、地域によって異なりますが、一般的な相場を把握しておくことは大切です。
一般的な仮設工事の総費用相場
一般的な30坪程度の住宅の場合、仮設工事全体で約50~80万円程度が目安となります。これは住宅建築費全体の約3~5%に相当します。地域や条件によって変動しますので、あくまで参考値として考えてください。
各工程別の費用相場
- 仮設電気の費用
- 初期費用… 申請費用が15,000~30,000円、引込工事費が50,000~100,000円程度かかります。
- ランニングコスト… 工事期間中の電気使用量に応じて変動する使用料(月5,000~10,000円程度)が別途発生します。
- 仮設水道の費用
- 初期費用… 申請費用が15,000~30,000円、引込工事費が50,000~100,000円程度です。
- ランニングコスト… 工事期間中の水道使用量に応じて変動する使用料(月3,000~8,000円程度)がかかります。
- 仮設トイレの費用 レンタル料が月10,000~15,000円程度、設置・回収費が15,000~30,000円、週1回程度の清掃で月5,000~10,000円程度の清掃費がかかります。
- 仮設道路整備の費用
- 鉄板レンタル… 1枚あたり月3,000~5,000円(必要枚数による)
- 砕石敷設… 1㎡あたり1,500~3,000円程度
- 仮囲い設置の費用 仮囲い材料費・設置費が1m当たり3,000~7,000円程度、レンタルの場合は1m当たり月1,000~2,000円程度です。敷地の周囲の長さによって総額が変わります。
- 足場組立の費用
- 足場本体… 足場材料・設置・解体費が1㎡あたり1,500~2,500円程度
- 養生シート… 1㎡あたり200~400円程度
費用を左右する要因
費用を左右する主な要因には以下のようなものがあります。
- 敷地条件… 傾斜地や狭小地ではコストアップします。特に足場設置が難しい敷地では費用が増加します。
- 工事期間… 長期間になるとレンタル費用が増加します。天候不良による工期延長なども費用増加の原因になります。
- 地域差… 都市部では費用が高めになる傾向があります。また、雪国では雪対策の追加費用が発生することもあります。
※ここで紹介した費用はあくまで目安です。地域や施工会社によって大きく異なる場合がありますので、必ず複数の見積もりを比較検討することをおすすめします。見積書では、仮設工事の内訳がしっかり記載されているかをチェックしましょう。
施主として知っておくべきこと
仮設工事は専門的な工事なので、細かい点まで施主がチェックする必要はありません。しかし、以下の点は押さえておくとよいでしょう。
- 見積もりの確認… 仮設工事の費用内訳が見積書に明記されているか確認しましょう
- 工事計画の把握… 仮設工事の概要と工程を理解しておくと安心です
- 近隣への配慮… 騒音・粉塵対策などについて施工会社の方針を確認しておきましょう
- 見学の安全性… 現場見学時は必ず施工会社の指示に従い、安全に配慮しましょう
仮設工事は、施工会社の仕事の質を反映します。しっかりとした仮設計画を立てる施工会社は、本体工事においても丁寧な仕事をする傾向があります。
まとめ
仮設工事は家づくりの安全と品質を支える重要な基盤です。細かいチェックは専門家に任せつつ、概要を理解しておくことで、安心して家づくりを進めることができます。見積もりの段階で仮設工事についても簡単に説明を受け、不明点があれば質問してみましょう。
(執筆者:あおちゃん)