【基礎工事①】掘削から鉄筋組みの費用と工程 なぜ高額なのか? 初心者向けチェックリスト付き

B. 基礎工事
(画像:Canva・AIにて作成)

家づくりって、目に見える部分にはこだわるけれど、地中に埋まる基礎工事は「よくわからないから任せておこう」と思いがちですよね。

多くの方が家づくりの見積もりを見て「基礎工事にこんなにお金がかかるの?」と驚きます。目に見えない部分だからこそ、なぜそれほどの費用が必要なのか理解しづらいものです。でも実は、この見えない基礎こそが、これから何十年と住み続ける家の安全と寿命を左右する最も重要な部分なのです。

この記事では、基礎工事の最初の段階である「掘削から鉄筋組み上げまで」の工程を分かりやすく解説します。

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そもそも基礎工事とは?家の土台を作る重要な工事

家を建てる際、最初に行われる大事な工事が基礎工事です。基礎は文字通り家の「基」となる部分で、建物全体を支える土台です。基礎がしっかりしていないと、いくら家の見える部分が立派でも、地震や年数が経つことで建物が傾いたり、最悪の場合は倒壊したりする可能性があります。

基礎工事は一般的に次のような流れで進みます。

  1. 家の位置決め… 敷地のどこに家を建てるか決める
  2. 土を掘る… 基礎を作るために地面を掘り下げる
  3. 地盤を固める… 掘った底に砕石を敷き詰めて固める
  4. 鉄筋を組む… 基礎の骨組みとなる鉄の棒を組み立てる
  5. 配管の穴を準備する… 水道管や排水管が通る穴を確保する
  6. 型枠を作る… コンクリートを流し込むための型を作る
  7. コンクリートを流す… 型枠内にコンクリートを流し込む
  8. コンクリートを固める… コンクリートが固まるまで養生する
  9. 仕上げ工事… 基礎の表面を仕上げる

この記事では、この中の「1〜5」の工程について詳しく見ていきましょう。

家の位置決め 家の正確な位置を決める最初の一歩

基礎工事の第一歩は、敷地内のどこに家を建てるのかを決める作業です。この工程で家の正確な位置と高さを決めます。

縄張り 建物の輪郭を描く

縄張りとは、実際の敷地に縄やビニール紐などを張って建物の位置を確認する作業です。設計図面通りに家が建つよう、敷地のどこに家が配置されるかを明確にします。

【縄張りのチェックポイント】

  • 敷地の境界線から家までの距離は図面通りか
  • 道路や隣家との位置関係は適切か
  • 方角(北向きなど)は合っているか
  • 四角い家なら、角が90度になっているか

この工程は一見単純ですが、ここでミスがあると家全体の位置がずれてしまうため、非常に重要です。専門家が測量機器を使って精密に行います。

水平の基準を作る

縄張りが終わると、建物の高さの基準となる印を設置します。通常、木の杭を地面に打ち込み、その上に水平な板を渡します。この板に建物の位置や高さの印をつけ、これを基準に工事を進めていきます。

【水平基準のチェックポイント】

  • 地面からの基礎の高さは適切か
  • 水平レベルは正確か
  • 建物の四隅の高さは揃っているか

この高さの基準は工事の進行に合わせて何度か作り直されることもありますが、建物の高さの基準となるため、正確さが求められます。

土を掘る 家の基礎を据える穴を掘る

家の位置が決まったら、次に基礎を据えるために地面を掘り下げます。

掘削の目的と深さ

掘削の主な目的は

  • 建物の重さを支えるための十分な深さまで掘ること
  • 表面の柔らかい土を取り除くこと
  • 基礎の下に石を敷くスペースを確保すること

掘削の深さは地域の気候や地盤の状態によって異なりますが、一般的には地表から30〜60cmほど掘り下げます。寒冷地ではもっと深く掘る必要があります。

掘削方法

掘削工事は主にショベルカーで行われます。熟練したオペレーターが操作し、設計図に基づいて正確に掘削します。

【掘削工事のチェックポイント】

  • 掘る範囲は図面通りか(建物より少し広めに掘る)
  • 掘る深さは均一か(でこぼこがないか)
  • 地下水が湧いてきたり、とても柔らかい地盤などの問題がないか

地盤を固める 掘った底を整え、強化する

掘削が終わったら、次は掘った底を平らに整え、石を敷き詰めて地盤を強化します。

底を平らにする

まず、掘削した地盤の底面を平らに整えます。この工程が不十分だと、基礎が均等に支えられず、将来的に建物の一部だけが沈む原因になります。

砕石を敷いて固める

底を平らにした後は、砕石(割られた石)を敷き詰めて締め固める作業を行います。砕石を敷く目的は

  • 地盤の支持力を高める
  • 地盤の一部だけ沈むのを防ぐ
  • 地面からの湿気の上昇を防ぐ

砕石は様々な大きさの石が混ざったものを使い、10〜15cm程度の厚さで敷き詰め、専用の機械で強く締め固めます。

【砕石敷きのチェックポイント】

  • 砕石の厚みは十分か(最低10cm以上)
  • しっかり固められているか(歩いても沈まない程度)
  • 砕石の上面は水平になっているか

湿気を防ぐシートを敷く

砕石を敷いた後、多くの場合「防湿シート」と呼ばれるビニールシートを敷きます。これは地中からの湿気が基礎に上がってくるのを防ぐためのものです。

薄いコンクリートを流す

防湿シートの上に薄いコンクリートを流し込むことがあります。これを「捨てコン」と呼びます。捨てコンの役割は

  • 鉄筋を正確に配置するための下地となる
  • 防湿シートを保護し、固定する

鉄筋を組み上げる 基礎の骨組みを作る

砕石敷きや捨てコンの工程が終わると、いよいよ基礎の骨組みとなる「鉄筋組み上げ」の工程に入ります。

鉄筋の役割と種類

コンクリートは押す力には強いですが、引っ張る力に弱いという特性があります。鉄筋は引っ張る力に強いため、この2つを組み合わせることで、強固な基礎ができあがります。

住宅の基礎では主に直径13mmや16mmの異形鉄筋(表面に凹凸がある鉄筋)が使われます。

鉄筋の組み方

鉄筋は設計図に基づいて以下のように組み立てられます。

  1. 底の部分の組み立て… 底に入る鉄筋を格子状に組む
  2. 立ち上がり部分の組み立て… 基礎の立ち上がり部分に鉄筋を組む
  3. 耐震金具の取り付け… 耐震性を高めるための金具を取り付ける

鉄筋と鉄筋の接合には針金を使って固定します。

【鉄筋工事のチェックポイント】

  • 鉄筋の太さは設計通りか
  • 鉄筋の間隔は適切か(一般的に20〜25cm間隔)
  • 鉄筋からコンクリート表面までの距離は十分か(4cm以上)
  • 鉄筋同士の結束はしっかりしているか
  • 鉄筋が錆びていないか
  • 鉄筋が地面や型枠に直接触れていないか

鉄筋の組み立てが完了したら「配筋検査」が行われます。これは鉄筋が設計図通りに施工されているかを確認する検査です。施主さんもこの配筋検査に立ち会うとよいでしょう。

配管の穴を準備する 将来の配管のための準備

鉄筋組み上げの工程とほぼ同時に行われるのが「配管スリーブ」の設置です。配管スリーブとは、基礎コンクリートを貫通して配管を通すための筒状の穴のことです。

配管用の穴の役割

住宅には様々な配管が必要ですが、基礎が完成した後では基礎を貫通する穴を開けるのは困難です。そのため、コンクリートを流し込む前に、将来配管が通る場所に筒状の穴(主に塩ビ管)を設置します。

主な配管用の穴には

  • 給水管用… 水道の給水管を通すための穴
  • 排水管用… 台所やお風呂などの排水管を通すための穴
  • ガス管用… ガス管を通すための穴
  • 電気配線用… 電気ケーブルを通すための穴

【配管スリーブのチェックポイント】

  • 穴の位置は設計図通りか
  • 穴の大きさ(直径)は適切か
  • 穴の設置で鉄筋を切断していないか
  • 外部に通じる穴は防水処理されているか

配管用の穴の位置や数が不足していると、後から追加工事が必要になり、余計な費用がかかります。

基礎工事にかかる費用と期間を理解しよう

基礎工事は家づくり全体の費用の中でも大きな割合を占めます。「なぜこんなにお金がかかるの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。

基礎工事の期間

基礎工事全体(掘削から型枠を外すまで)の期間は、天候や地盤条件にもよりますが、一般的な住宅(30坪程度)では約2〜3週間かかります。

【工程別の期間目安】

  • 掘削工事:1日
  • 地盤固め、砕石敷き:1〜2日
  • 捨てコン打設:1日
  • 鉄筋組み立て:2〜3日
  • 型枠工事:2〜3日
  • コンクリート打設:1日
  • コンクリート養生期間:3〜7日(季節により変動)
  • 型枠解体・後片付け:1日

※雨天や特殊な地盤条件がある場合は、さらに日数がかかることがあります。

掘削〜鉄筋工事までの費用相場

【掘削工事】 一般的な住宅での総額:約20〜40万円

【地盤固め工事】 一般的な住宅での総額:約15〜25万円

【鉄筋工事】 一般的な住宅での総額:約40〜60万円

【配管穴設置】 材料費と設置費用:約5〜10万円

※上記はあくまで一般的な目安であり、使用する材料のグレードや施工条件、地域・施工会社によって前後する場合があります。実際の費用については必ず施工業者にご確認ください。

費用に影響する主な要素

  • 地盤の状態… 柔らかい地盤の場合は地盤改良費用が別途必要(約50〜100万円)
  • 建物の大きさ… 建物が大きくなれば比例して費用も増加
  • 基礎の種類… ベタ基礎は布基礎より材料費が高い
  • 地域差… 都市部と地方では材料費や人件費に差がある

基礎工事全体の費用目安

30坪程度の一般的な住宅では、基礎工事全体(掘削〜コンクリート打設まで)で約150〜250万円が相場です。坪単価にすると約5〜8万円程度となります。

基礎工事の費用は決して安くありませんが、この部分は家全体の安全性と耐久性を左右する重要な投資です。

基礎の寿命を左右する地盤と鉄筋

家づくりでは、目には見えない部分の品質がとても重要です。特に基礎工事の中でも、地盤の固さと鉄筋工事は家の寿命を大きく左右します。

地盤の状態は敷地によって大きく異なります。柔らかい地盤の場合、追加の地盤改良工事が必要になることもあります。また、鉄筋工事は基礎の「骨組み」を作る工程。この品質が低いと、将来的に大きな問題につながる可能性があります。

施主としては「コストをできるだけ抑えたい」と思うのは当然ですが、基礎工事においては品質を優先すべき部分もあります。例えば、鉄筋の本数を減らしたり、細いものにしたりすることでコストダウンできますが、それは将来的な安全性を犠牲にする可能性があります。

現場見学時の注意点

基礎工事の現場を見学する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 安全第一… 現場は危険な場所です。現場監督の指示に従い、ヘルメットなどの安全装備を着用しましょう。
  • 適切なタイミング… 特に鉄筋組み上げ完了後、コンクリート打設前が重要なチェックポイントとなります。
  • 質問は遠慮なく… 分からないことは素直に質問しましょう。
  • 写真撮影… 各工程の写真を撮っておくと後で確認できます。特に鉄筋の配置や配管用の穴の位置など、後で見えなくなる部分は必ず記録しておきましょう。

まとめ 掘削〜鉄筋工事は家づくりの土台となる重要工程

基礎工事の初期段階である「掘削から鉄筋組み上げまで」は、家全体の安全性と耐久性を左右する非常に重要な工程です。この部分をおろそかにすると、将来的に様々な問題が発生する可能性があります。

ここで紹介した各工程は、家の寿命に直結する重要なものばかりです。特に鉄筋の配置や鉄筋からコンクリート表面までの距離は、基礎の耐久性に大きく影響します。

施主さん自身が現場に足を運び、工事の進行状況を確認することで、安心して住める家づくりができるでしょう。分からないことは遠慮せず質問し、自分の家がしっかりした基礎の上に建っていることを確認してください。

次回は、基礎工事の次の段階である「型枠工事とコンクリート打設」について詳しく解説します。

初心者でもできる!基礎工事チェックポイント

土を掘った後で

□ 掘った穴の深さは家全体で均一に見えるか(でこぼこしていないか)

□ 水がたまっていないか、地面がぬかるんでいないか

□ 掘った範囲は家の予定地より少し広めになっているか

石を敷いた後で

□ 石が均等に敷き詰められているか(薄い部分がないか)

□ 石を踏むと沈み込まないか(しっかり固められているか)

□ ビニールシート(防湿シート)は破れていないか、すき間なく敷かれているか

□ コンクリートの下地(捨てコン)は平らに仕上がっているか

鉄筋が組まれた後で

□ 鉄筋は錆びついていないか(少し赤茶色は問題ないが、ボロボロした赤錆はNG)

□ 鉄筋と鉄筋の間隔は均等に見えるか(バラバラに見えないか)

□ 鉄筋が地面や型枠に直接触れていないか(4cm程度浮いているか)

□ 鉄筋同士の結び目はしっかり針金で固定されているか

□ 水道・排水・電気などの配管用の穴は図面通りの位置にあるか

(執筆者:あおちゃん)