家づくりの見積もりを見ると、なぜ基礎工事にこれほどお金がかかるのか疑問に思いますよね。「目に見えなくなる部分なのに…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
基礎工事は、家の寿命を左右する非常に重要な工程です。特に型枠工事とコンクリート打設は、基礎の形を決める決定的な段階。なのに完成後には見えなくなるため、「本当にしっかりした工事ができているのか」と不安になるのも当然です。
この記事では、前回の「掘削〜鉄筋工事」に続く工程として、「型枠組み立て」から「コンクリート打設」、そして「型枠解体・養生」までの流れを詳しく解説します。
この記事は基礎工事シリーズ第2回です。まだ読んでいない方はこちらもどうぞ
- 基礎工事①:掘削〜鉄筋工事編
型枠とは?基礎の「形」を決める重要な枠組み
型枠とは、コンクリートを流し込むための「型」のことです。コンクリートは液体状で流し込まれ、数日かけて固まっていきます。その間、決められた形を保つために必要なのが型枠です。
型枠の役割
型枠には以下のような重要な役割があります。
- コンクリートを設計通りの形・寸法に固める
- 液状のコンクリートを保持する
- コンクリート表面を滑らかに仕上げる
型枠がしっかりしていないと、コンクリートがはみ出したり、形が歪んだりして、基礎の強度に影響を与える可能性があります。
型枠の種類
住宅の基礎工事で使われる型枠は、主に次のような種類があります。
- 木製型枠… 最も一般的な型枠で、合板(ベニヤ板)を使用します。比較的安価で加工しやすいのが特徴です。
- 鋼製型枠… 鉄製の型枠で、耐久性が高く、何度も再利用できます。
- アルミ製型枠… 軽量で組み立てやすく、表面の仕上がりもきれいになります。
住宅の基礎工事では、コストと作業性のバランスから、木製型枠が多く採用されています。
基礎型枠組み立ての流れとポイント
鉄筋組み立てが終わると、いよいよ型枠の組み立て作業に入ります。
型枠組み立ての手順
- 墨出し(位置の確認)… まず、図面に基づいて基礎の位置や高さを正確に墨出しします。
- 底盤部分の型枠設置… 基礎の底部分の型枠を先に設置します。
- 立ち上がり部分の外側型枠設置… 底盤の外周に沿って、立ち上がり部分の外側の型枠を設置します。
- セパレーターの設置… 外側型枠が完成したら、基礎の厚みを均一に保つためのセパレーターを設置します。これは型枠同士の間隔を保つための金具やパイプです。
- 立ち上がり部分の内側型枠設置… 最後に立ち上がり部分の内側に型枠を設置します。
- 型枠の補強… 型枠が歪まないように、外側からは支柱や筋交いなどで補強します。
型枠工事のチェックポイント
型枠の組み立てが完了したら、以下のポイントをチェックしましょう。
- 型枠が垂直・水平になっているか
- 基礎の幅や高さが設計図通りになっているか
- 型枠の継ぎ目に大きな隙間がないか
- 型枠がしっかり固定されているか
- 型枠内部にゴミや落ち葉などが入っていないか
アンカーボルトの設置 基礎と土台を繋ぐ重要な部材
型枠の組み立てが完了した後、コンクリート打設前に重要な工程があります。それは「アンカーボルト」の設置です。
アンカーボルトとは
アンカーボルトは、基礎コンクリートと木造住宅の土台を固定するための金具です。コンクリートが固まる前に埋め込んでおくことで、基礎と建物をしっかりと一体化させる役割があります。
特に地震大国の日本では、アンカーボルトの役割は非常に重要です。地震の揺れによって建物が基礎からずれることを防ぎます。
アンカーボルトの設置位置と基準
アンカーボルトの設置には以下のような基準があります。
- 間隔:一般的に2.7m以内
- 位置:土台の継ぎ目や柱が載る部分の近くに設置
- 出寸法:コンクリート上面からボルトの上端までの長さが適切であること
【アンカーボルト設置のチェックポイント】
- アンカーボルトの間隔は2.7m以内になっているか
- ボルトはまっすぐに立っているか
- 土台の継ぎ目付近や柱の下付近に配置されているか
- 出寸法は適切か(一般的に40〜50mm程度)
- 図面通りの本数が設置されているか
基礎コンクリート打設 基礎工事の中心となる作業
型枠の組み立てとアンカーボルトの設置が完了したら、いよいよ「コンクリート打設」の工程に入ります。
コンクリートの種類と品質
住宅の基礎に使用されるコンクリートには、強度や耐久性に関する基準があります。一般的に使用されるのは
- 設計基準強度… 通常21N/mm²以上
- スランプ値… 18cm程度(流動性を表す値)
- 水セメント比… 55%以下(水とセメントの比率)
コンクリートの品質はとても重要です。強度が不足していると、将来的にひび割れの原因になります。
コンクリート打設の手順
- 打設前の準備… 生コン車が到着したら、注文通りのコンクリートが届いたか確認します。
- 底盤部分への打設… 最初に基礎の底盤部分にコンクリートを打設します。
- バイブレーターによる締固め… コンクリート内の空気を抜くために、バイブレーターという振動機を使って締固めを行います。
- レベル調整… 底盤部分のコンクリート上面を平らに均します。
- 立ち上がり部分への打設… 底盤部分が少し固まってきたら、立ち上がり部分にコンクリートを打設します。
- 天端(上面)の仕上げ… 最後に基礎の上面を平らに仕上げます。
コンクリート打設のチェックポイント
コンクリート打設時には以下のポイントをチェックしましょう。
- 生コン車の伝票で強度や配合を確認
- コンクリートが型枠の隅々まで行き渡っているか
- バイブレーターでしっかり締固めているか
- 基礎天端が水平に仕上がっているか
特に夏場の暑い時期や冬場の寒い時期は、コンクリートの品質に影響が出やすいため、適切な養生が重要です。
養生 コンクリートの強度を確保するための重要工程
コンクリート打設後、すぐに型枠を外すことはできません。コンクリートが十分な強度を得るまでの期間、適切に保護することを「養生」と呼びます。
養生の目的と方法
養生には主に以下のような目的があります。
- コンクリートが適切な温度と湿度の中で硬化するのを助ける
- 乾燥によるひび割れを防止する
- 低温時の凍結を防止する
- 高温時の急激な水分蒸発を防止する
養生の方法としては
- 湿潤養生… コンクリート表面に水をかけたり、濡れたむしろなどで覆う
- シート養生… ビニールシートでコンクリートを覆う
- 温度管理… 寒冷期には保温マットなどを使う
養生期間の目安
養生期間は気温や湿度によって変わりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 夏期(気温25℃以上):3〜4日程度
- 春・秋期(気温15〜25℃):5〜7日程度
- 冬期(気温5〜15℃):7〜10日程度
養生のチェックポイント
- 雨水や直射日光から適切に保護されているか
- 必要に応じて散水などが行われているか
- 適切な養生期間が確保されているか
養生が不十分だと、コンクリートの強度不足やひび割れの原因となり、基礎の耐久性に大きく影響します。
型枠解体 慎重に行われるべき作業
養生期間を経て、コンクリートが十分な強度を得たら、型枠を解体します。これを「脱型」とも呼びます。
型枠解体のタイミング
型枠解体のタイミングは、コンクリートが自立できる強度に達したかどうかで判断します。早すぎる型枠解体は避けるべきです。
型枠解体の手順
- 支持材の取り外し… まず、型枠を支えていた支柱や筋交いなどを取り外します。
- セパレーターの処理… セパレーターの処理方法は種類によって異なります。
- 型枠本体の取り外し… 最後に型枠本体を丁寧に取り外します。
型枠解体後のチェックポイント
型枠を外した後は、コンクリートの仕上がり状態を確認します。
- 表面に気泡やハチの巣状の欠陥(ジャンカ)がないか
- 設計通りの寸法になっているか
- 基礎が垂直、水平に仕上がっているか
- 表面にひび割れがないか
- アンカーボルトの位置や出寸法は適切か
基礎工事の補修と埋め戻し
型枠解体後、必要に応じて基礎の補修を行い、外周部分の埋め戻しを行います。
基礎補修の方法
型枠解体後に見つかった欠陥は、その程度に応じて補修します。
- 表面の気泡… セメントペーストで埋め込む
- 小さなジャンカ… モルタルで埋め込む
- 大きなジャンカや欠損… 特殊な補修材を使用
埋め戻しの目的と方法
基礎の外周部分は、型枠解体後に土で埋め戻します。埋め戻しの目的は、基礎の安定性を高め、基礎周りの排水を確保し、後の外構工事のための地盤を整えることです。
埋め戻し作業は次のような手順で行われます。
- 防水処理… 基礎の外側表面に防水モルタルなどを塗布します。
- 排水管の設置… 基礎周りに排水管を設置することもあります。
- 埋め戻し材の投入… 最後に土や砂などを投入し、適度に締め固めます。
基礎工事にかかる費用と期間を理解しよう
基礎工事における型枠工事とコンクリート打設は費用も時間もかかりますが、家の形と強度を決める重要な工程です。
型枠工事とコンクリート打設の期間
型枠工事からコンクリート打設、養生、型枠解体までの期間は、天候や季節にもよりますが、一般的な住宅(30坪程度)では約1〜2週間かかります。
【工程別の期間目安】
- 型枠組み立て:2〜3日
- コンクリート打設:1日
- コンクリート養生期間:3〜7日(季節により変動)
- 型枠解体・後片付け:1日
型枠工事とコンクリート打設の費用相場
【型枠工事】 一般的な住宅での総額:約30〜50万円
【コンクリート打設】 一般的な住宅での総額:約20〜40万円
【養生・型枠解体】 一般的な住宅での総額:約10〜20万円
費用に影響する主な要素
- 基礎の形状… 複雑な形状だと型枠工事の費用が高くなる
- コンクリートの種類… 高強度コンクリートなど特殊なものは高価
- 季節… 冬場は凍結防止対策などの追加費用が必要
現場見学時の注意点
基礎工事の現場を見学する際には、以下の点に注意しましょう:
- 安全第一… 現場は危険な場所です。現場監督の指示に従い、ヘルメットなどの安全装備を着用しましょう。
- 適切なタイミング… 特にコンクリート打設前と型枠解体後が重要なチェックポイントとなります。
- 質問は遠慮なく… 分からないことは素直に質問しましょう。
- 写真撮影… 各工程の写真を撮っておくと後で確認できます。
まとめ コンクリートと型枠が決める家の基礎の質
基礎工事における型枠工事とコンクリート打設は、家の寿命を左右する重要な工程です。型枠によって基礎の形が決まり、コンクリートの品質によって強度と耐久性が決まります。
特に養生期間は、工期を急ぐあまり短縮されがちですが、将来の住まいの安全のためには、適切な期間を確保することが重要です。
施主さん自身が現場に足を運び、工事の進行状況を確認することで、安心して住める家づくりができるでしょう。
次回は、基礎工事の仕上げ段階である「玄関ステップ打設」や「基礎断熱材貼り」などについて解説します。
初心者でもできる!基礎工事のチェックポイント
型枠組み立て時のチェックリスト
□ 型枠はガタつかず、しっかり固定されているか
□ 型枠の内側に木くずやゴミが入っていないか
□ 型枠の継ぎ目に大きな隙間がないか
□ コンクリートを流し込む高さを示す印があるか
コンクリート打設時のチェックリスト
□ 生コン車の伝票の内容を確認したか
□ コンクリートの流し込みは少しずつ、均等に行われているか
□ バイブレーターでしっかり締め固めているか
□ 暑い日や寒い日の特別な対策はされているか
□ アンカーボルトの位置がずれていないか
養生・型枠解体時のチェックリスト
□ 養生期間は適切か(夏場で最低3日、冬場で7日以上)
□ 雨や直射日光からコンクリートは保護されているか
□ 型枠解体後のコンクリートに大きな気泡やハチの巣状の穴はないか
□ 基礎は水平に保たれているか
□ ひび割れはないか
(執筆者:あおちゃん)