「第4次食育推進基本計画」と聞いても「初めて聞いた」「難しそう」「自分には関係ない」と感じる方は多いかもしれません。
しかし、農林水産省が定めるこの計画は、国が食育を広げるための指針です。特に2021年から2025年にかけて進められている「第4次計画」は、「家庭での食育」や「持続可能な食の選択」がテーマとなっています。
実は、子育て世代にこそ参考になる情報が多く詰まっている、身近な資料なんですよね。
今回は「第4次食育推進基本計画」の内容をもとに、家庭で手軽に実践できる食育の工夫について解説します。
家庭でできる!第4次計画の「食育」実践例
「政策」と聞くと、ハードルが高く感じられる方も多いでしょう。しかし、実は、普段の生活に手軽に取り入れられるものばかりです。
ここでは、家庭で取り入れやすい実践アイデアをご紹介します。
一緒にご飯を作る時間をもつ
特別な料理でなくても、立派な食育になります。子どもと一緒におにぎりを握ったり、野菜の皮をむいたりと、できるお手伝いから始めましょう。
お手伝いを楽しく習慣化するには「無理強いしない」のがコツです。子どもの集中力は長く続かないことも多いため、最初は1分程度で終わってしまうこともあるでしょう。
しかし、無理に続けさせると「お手伝い=嫌なもの」という印象をもってしまい、挑戦したがらなくなる可能性があります。
すぐに飽きてしまっても「ありがとう。助かったよ。」「○○ちゃんとご飯作りができて嬉しかった」「また一緒に作ろうね」など前向きな言葉を伝え、次の機会につなげることが大切です。
参考:農林水産省「第4次食育推進基本計画 1.食育、知っていますか」
一緒に食べる時間を作る
帰宅の時間がバラバラだったり習い事があったりして、子どもと食事のタイミングが合わないこともあるでしょう。
しかし、親子で一緒に食事を食べることは、食育においてとても大きな価値があります。
・食べすぎを予防する
・心の満足度を高める
・食事のマナーを習得する
・言葉の力を育てる
・コミュニケーション力を伸ばす
・健康的な食生活を身に付ける
毎日、毎食でなくて大丈夫です。
「休みの日の朝ご飯は家族そろって食べる」
「家族の誕生日はみんなで晩ご飯を食べる」
無理のない範囲から子どもと一緒に食事をする時間を作っていきましょう。
参考:農林水産省「食育の推進に役立つエビデンス(根拠)」
参考:農林水産省「第4次食育推進基本計画 2.誰かと一緒に食べていますか」
よく噛んで食べる力を育む
現代はやわらかい食べ物が多く「よく噛んで食べる」習慣が身に付きにくいといわれています。
しかし、よく噛む習慣は、子どもの心と体の両方に多くの良い影響を与えるものです。
・肥満予防
・虫歯予防
・脳の活性化
・味覚の発達
・歯やアゴの成長を促進
よく噛んで食べる習慣を身に付けるには「30回噛もうね」などと回数を目安にするのも良いでしょう。
目標がはっきりするため、前向きな気持ちでかむ回数が増えやすくなります。
また、「どんな音がする?」「かんでいると音が変わるね」といった音に集中させる声かけも、楽しく噛むために効果的です。
勝負ごとがお好きなお子さんの場合は「どっちが長くかめるか勝負!」と誘ってみる方法もあります。
遊び感覚で、意欲的に挑戦しやすくなりますよ。
参考:農林水産省「第4次食育推進基本計画 4.ゆっくりよく噛んで食べていますか」
地元の食材や季節のものを意識して選ぶ
お買い物の際に「このトマトは○○県産だよ」「この魚は海外から運ばれてきたんだね」といった会話をするのも、立派な食育の1つです。
旬の食材をみつけたら「今が一番おいしいんだよね」「オクラは、夏だけのおいしい野菜なんだよ」と話題にするのも良いでしょう。
こうしたやりとりを子どもの頃から積み重ねていくことで、大人になったときに自分で新鮮な食材を選ぶ力や、バランスの良い食生活を送る力が育まれます。
:農林水産省「第4次食育推進基本計画 7.その食べ物、誰がどこで作ったものか、気にして選んでいますか」
忙しいママ・パパにもできる!食育の工夫と続け方

おうちでも手軽にできる「食育」ですが、続けることが大切です。
とはいえ、忙しい毎日の中で「続けるのが難しい…」と感じることもあるでしょう。
ここでは「やらなきゃ」で終わらずに、無理なく食育を続けるためのコツを紹介します。
無理なくできることから始める
食育と聞くと「毎日ご飯を手作りしなきゃ」「品数を揃えなきゃ」という気持ちになりますが、そんなことはありません。
市販品の力を借りて調理の手間や時間を短縮し、お子さんとゆっくり会話を楽しみながら食事をすれば、充実した食事の時間になります。
おにぎりとみそ汁の2品のご飯でも「みそ汁に入ってる具材を当ててみて」「スープの新玉ねぎは、春が旬だよ」などと会話のきっかけにすれば、これも十分な食育です。
ハードルを上げ過ぎずに、できることから少しずつ始めていきましょう。
負担なくできるペースから始める
毎日食育に関する働きかけができるのが理想ですが、仕事に家事とめまぐるしい日々の中で、思うように実践できない日もあるでしょう。
しかし、食育は「できるときにできることに挑戦する」だけでも十分です。
・週末だけ一緒に料理をする
・週に1回、子どもと一緒にお買い物に行く
・1日1回、食事中に食材を話題にした会話をする
「何もできなかった」と落ち込むのではなく「今日は旬の食材を紹介できた」「5分だったけど、一緒に食事する時間を作れた」と、小さくても前向きな積み重ねを大事にしましょう。
大人が食事を楽しむ姿を見せる
子どもは、親の姿をよく見ています。
初めての食材を食べさせるとき、先に大人がおいしそうに食べる姿を見せておくと、スムーズに挑戦できたり食べる量が増えたりします。
親自身が食事を楽しむ姿を見せることで、子どもも自然に「食べてみたいな」「ご飯の時間って楽しいな」と感じられるようになるんですよね。
つい「食べなさい」と言いたくなることもありますが、何度も言っていると親子ともにストレスを感じてしまいがち。
特別なことをしようと頑張らなくてOKです。「これおいしいね」「ママ、このお味噌汁大好きなんだよね」と、食事を楽しむ姿を見せていきましょう。
まとめ|食育は、暮らしを楽しむひと工夫

「食育」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。でも実は、暮らしをちょっと豊かにしてくれる、身近なものです。子どもと一緒に野菜を選んだり、地域の食材を食卓に並べるだけでも、立派な食育の実践となります。
「第4次食育推進基本計画」は、こうした日々の行動のヒントになる情報がたくさん詰まった頼りになる資料です。
一気に全てに取り組んで頑張る必要はありません。頑張りすぎると、続けるのが大変になってしまいます。できることから少しずつ、普段の生活の中に食育を取り入れていきましょう。
(執筆者:渡辺ゆき)