Z世代の子育て支援に必要なのは「共働き世帯の本気支援」

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(画像:AI・Canvaにて作成)

いよいよZ世代(1990年代後半~2010年初頭生まれ)が親になりはじめています。彼らは「モノよりコト」「共感と自己肯定感重視」といった独自の価値観を育児に反映しつつ、仕事との両立を前提とする“共働き子育て世代”でもあります。

しかし、現在の政府支援はZ世代の現実的ニーズに十分応えられているでしょうか?

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共働きが“前提”のZ世代

Z世代にとって「育児は母親だけの仕事ではない」「家計は夫婦で支える」が常識。男女ともに育児に参加し、キャリアと両立するという意識は自然なものです。

モノ以上に体験を重視するから、子育てしながら自分たちも人生を楽しみたいという傾向が強まってくる。これに加え、両親や祖父母、家族に対しても、我々昭和世代に比べ、より優しく接するのも特徴です。

共働きは、子育て世帯の7割を超えているといわれますが、今後、さらにその割合が増えていくでしょう。

政府の制度が追いついているのは疑問

政府もこうした動きに対応しようと、2024年度から「出生後休業支援給付金」や、2025年度には「育児時短就業給付金」などを新設予定です(下図にこども家庭庁資料)。こうした取り組みは評価できますが、根本的な「共働き基盤の支援」がまだまだ弱いのが実情です。

たとえば、多くの共働き世帯が直面する問題──それは“保育の質”と“学童保育の不足”。保育士の配置基準はまだ十分とは言えず、保育時間の延長や病児保育など柔軟な選択肢も都市部を中心に限られています。

選択と集中でいえば、子育て支援は「集中、集中、集中」の段階で、既存の保育サービスを更に充実化し、そのうえで新サービスを提供する必要があります。

こども誰でも通園制度は“本来支援すべき家庭”に逆風?

2026年度から本格導入が予定されている「こども誰でも通園制度」。保護者の就労に関係なく、希望すれば誰でも一時的に保育を受けられる制度として、専業主婦(夫)家庭などにも開かれた支援策です。

一見、平等な制度に見えますが、問題は保育の現場にしわ寄せがいく可能性です。保育士不足が続く中、共働き世帯の“日常的な保育”が後回しになり、保育の質そのものが低下するリスクが指摘されています。

これでは本末転倒。共働き世帯を支援するための既存の保育サービスは充実強化が必要だと思います。

保育の基盤を大切に制度改変を

本来、継続的に保育を必要とする家庭への支援が最優先されるべきではないでしょうか。Z世代の共働き世帯にとって、保育の安定は生活の土台です。この土台を脆くしては、どんな先進的な制度も意味を成しません。

こうした基盤があってこそ、「2人目、3人目を産もうか」という次のステップに進むのです。実際に子育てしている共働き世帯の声を聞いて今後制度設計を進めてほしい。

とはいえ、専業主婦世帯の子育て支援をないがしろにしてもいい、と言っているわけではありません。子育て支援が一丁目一番地の施策であるなら、基本の保育サービスを充実させ、更に専業主婦らの支援も充実化すべきです。

そこが中途半端だから、若い世帯は本来、生みたい2人目、3人目をあきらめざるを得ないことになる。1人当たりの子育ては少なくとも18年くらいは続く。

政府が明確な強い姿勢を示すことで、子育てする若者にとって未来への安心感が生まれるのです

本当に求められている支援とは?

Z世代の親たちが望んでいるのは、子どもとの時間を大切にしながらも、自分たちのキャリアや生活を犠牲にしない支援体制です。

  • 保育の量と質の確保(定員拡充・人材確保)
  • 学童や放課後支援の時間・内容の拡充
  • 柔軟な働き方と育児を両立できる職場環境への誘導
  • 子どもの感性や自己肯定感を育む教育支援
  • 経済的負担の軽減

これらを実現することで初めて、「育てながら働ける社会」が見えてきます。この仕組みが実現できれば、少子高齢化に悩む世界の先進国の先進事例として、リーダーシップを発揮することもできそうです。

まとめ:Z世代に合った支援のアップデートを

政府の支援は少しずつ進んでいます。しかし、Z世代の価値観と実態に即した、より精緻な制度設計が求められています。

「共働きでも安心して3人以上の子育てが実現できる社会」──それが、Z世代にとって子育てしやすい未来の鍵になるはずです。

(執筆者:スモール・サン)