「推し活」という言葉をご存知だろうか。アイドル、アニメ、キャラクター、芸人、YouTuberなど、自分が応援したい存在=“推し”を熱心に愛で、楽しむ活動のことを指す。
若い世代を中心に広がってきたこの文化が、今、子育て世代のメンタルを支える重要な存在になっている。

昔は「貧乏子だくさん」と言われ、子育てにメリットがあったが、近年子育ては「負債」と捉えられやすくなった。改めて子育てのメリットに着目し、ワンオペ育児で忙しい日々を送るママたちに「子育てって楽しいこともあるんだよ」と、エールを贈りたい
私の妻はEXILE TRIBE(グループ)の大ファンだった次女の影響で、一緒に三代目 J Soul Brothersのドーム公演に参加。娘が就職したいまでも今度は長女を誘い、3人でコンサート巡りを楽しんでいる。元々アイドル追っかけ気質はなかったが、次女の影響で楽しさが開花した。「子育てのご利益よ」と妻は心底楽しそうだ。
この他にも、子育て中の親たちに話を聞く中で、「推し活があったから育児を頑張れた」「子どもと一緒に推しを楽しむことで家庭が明るくなった」といった声を数多く耳にした。今回は、そうした“推し活×子育て”のリアルな姿を紹介したい。
子どもが教えてくれる“今どきの推し”
ある30代の母親・Aさんは、私の妻同様、元々アニメやアイドルには無縁のタイプだった。しかし、子どもがプリキュアシリーズにハマったことがきっかけで、一緒に視聴するように。毎週放送を楽しみにするうちに、自分自身もストーリーやキャラクターの魅力に引き込まれていったという。
「正直、最初は子どもに付き合っているだけのつもりでした。でも今では“私の推し”もいて、グッズ売り場でつい大人買いしそうになります(笑)」とAさん。かつては遠い存在だった“推し活”が、「子どもを通して自分の世界にも自然に入り込んできた」と語る。
家族の会話が“推し”で増える
Aさんの家庭では、子どもと一緒にアニメの話をしたり、イベントに出かけたりすることが「家族の恒例行事」になっているという。夫も巻き込みながら、親子で「誰が一番好きか」「今日のストーリーどうだった?」と盛り上がる時間が、家族のコミュニケーションを豊かにしている。
「推し活って、ひとりで没頭するイメージがあったけれど、今はむしろ“家族で共有する楽しみ”になっています。何より、子どもと同じものを好きでいられる時間って、本当に貴重なんですよね」
子育ての一番の悩みは子どもとのコミュニケーション。共通の推し活で、思春期の難しい子育ても乗り越えることが出来るかもしれない。
推し活が心を整える「育児の調整弁」に
Bさん(40代・二児の母)は、子育てにストレスを感じやすい時期、偶然再会した昔のアイドルグループのYouTubeチャンネルに救われたという。
「子どもが寝たあと、15分だけ“推し”の動画を観る。それだけで気持ちがリセットされて、また頑張れる気がするんです」
推し活は、Bさんにとって「ひとりの人間として、自分を取り戻す時間」だ。仕事、育児、家事とすべてが“人のため”になりがちな生活の中で、自分の“好き”を優先できる瞬間は、精神的なバランスを整えるためにも欠かせないという。
ワンオペ育児の問題はママが孤立すること。メンタルサポートには「推し活」もあり
子どもに「夢中になる姿」を見せられる
AさんもBさんも共通していたのは、「推し活をする自分の姿を、子どもに隠さず見せている」という点だ。
「好きなことに夢中になるって、すごく素敵なこと。それを子どもに見せておきたいんです。“ママって楽しそうだな”って思ってくれたら、自己肯定感にもつながると思うから」とAさん。
推し活は、単なる趣味を超えて、育児における“自己肯定感の回復装置”としての役割も果たしているように見える。世代は違ってもなにか【共通言語】を持つのは強いんではないでしょうか。
推し活は、子育てを前向きにする「共鳴装置」
子どもがいるからこそ出会えたキャラクター、共感できた物語。推し活を通して、子どもとの距離が縮まり、育児が楽しくなる。そんな実感を持つ親たちは、今、確実に増えている。
私は推し活をしていなかったが、彼女らの話を聞いて、推し活は単なる余暇ではなく、「育児を続けるための大事なエネルギー源」だと感じた。実は、当時の私は娘と一緒にコンサートに通う妻のことをあまりよく思っていなかった。
いまは違う。推し活の効果について理解できるようになった。来月、ドームで行われる三代目 J Soul Brothersのコンサートに2人の娘と行く妻に対し、「楽しんできてね」と素直な笑顔で送り出せそうだ。
まとめ
好きなものを好きだと言える日常。「推し」を通じて心が潤う暮らし。これもまた、子育てを応援するための一つの在り方なのだと思う。
経済支援も重要だが、ママ、パパたちの「推し」を見守れる環境の創出も必要なのかもしれない。
そしてこんな推し活ママ、パパたちを受け入れ、応援する社会であってほしいと願っている。
(執筆者:スモール・サン)