受験―元々、私は野球、ラグビー、バンド、演劇とまじめに(笑)、スポーツ・文化活動ばかりしてきたようなタイプで、成人してからは二度と深く関わり合いたくないと思っていました。
3人の子育てをする中で、まさか子どもの受験が、自分の受験のとき以上に私の精神的プレッシャーになろうとは、思いもしなかったのです。
しかし、結論から言うと、過度に悲観し悩む必要はない―ということです。あくまでも私の個人的見解ですが、親のスタンスとしては、子どもがやる気になったときにサポートしてあげるだけ、でいいのだと思います。
合格=ゴールではない時代
かつて志望学校に合格することがある意味「ゴール」と思われていた風潮もありました。しかし今、多くの家庭で「そこからが本当のスタートだった」と感じる親子が増えています。
特に大学受験は、子どもの人生にとって、親にとっても、大きな転機となるイベント。ところが進学後の中退や再進路、卒業後の就職、転職と、合格した後も消えない心配がのしかかってきます。
子どもたちの志向はあまりにも多様化しており、個人差の大きい時代に突入しています。
我が家の受験ストーリー 三者三様の道のり
恥ずかしながら私は「出来の良いパパ」ではありませんでした。すぐに感情的になるし、明確な道しるべを与えるのが親の役目だと勝手に思っていました。
3人の子供には「朝は早く起きろ」とか「規則正しい生活をしろ」「勉強しろ」とか、自分はそんなに優秀でもなかったのに、人生を少し経験しているからという傲慢さで、強く言ってきたような気がします。
そんな父親の言葉は馬耳東風。子どもたちは、ほとんど聞いていなかったのではないでしょうか。逆に妻は、明確なビジョンを絶対に示さないタイプで、子どもに好きなようにさせていました。
振り返ってみると、妻の戦略が完全に功を奏していました。私は仕事でほとんど家庭を顧みることはなく、たまに夜遅く帰って来た時、末っ子の息子がパソコンでゲームばかりしているのを見て、怒ったりする程度。息子は反抗的で、夜、私が寝る時間頃から本格的に勉強を始める典型的な夜型でした。
決めつけない指導法の妻が正解だった
何故やる気になったのか分かりませんが、その息子が高校3年に上がる頃から急に勉強に目覚めました。利用し放題の全国チェーンの塾にも夜遅くまで通い、妻は昼と夜食用の1日2回弁当を作って、塾まで毎日持って行っていました。
ある日、息子が「会社の会議室で使う白板がほしい」というのでアマゾンで購入。購入対象は法人指定だったため、会社の事務所に送ってもらい、それを家まで持って帰りました。息子はそれに数学の計算式を書き出し、頭にインプットしていたようです。
効果があったのか分かりませんが、結局その息子が3人のうちで最も偏差値の高い、関西の難関国立大学に進学しました。
なにが息子の勉強熱に火を付けたのか
3人の子どもは全員が年子で2歳ずつしか離れていないため、ある時期からものすごい喧嘩ばかりする3姉弟になりました。特に次女と末っ子の長男の喧嘩が激しく、妻も頭を抱えていました。息子は一番気性が激しく、勉強も中程度だったため、妻は高校進学時、地元の「工業高校にすれば」と言っていたくらいです。
そんな息子が関西の難関国立大学を志望するようになったこと自体、親とすれば半信半疑でした。どういったきっかけで勉強熱に火がついたのか。親の我々がつけた訳でないことだけは、はっきりしています。
私の思い描いた形ではなかったけれど、彼なりに目標を見つけ、努力していたのだと思います。そこは親には見えない世界があり、植物の成長を待つように我慢強く見守るしかないのかもしれません。
昭和世代の親にとっての“やる気”の導き方
この経験から感じたのは、「やる気を起こさせること」の難しさ。そして、その導き方が、私たち昭和世代の育てられ方とはまるっきり違うということです。
親の価値観が通じないもどかしさ、「自分の子育てが間違っていたのでは」と悩む気持ち、そして結果的に子どもが思うように進んでいく驚きと安堵。すべてが混ざり合い、親のメンタルも揺れ動きます。
親も“学び直し”の時代に
「大学なんてどこでも一緒」と口にしていた私。心のどこかで、子どもが現実に向き合い心折れる状況から、親のほうが先に逃げていたのかもしれません。
でも子どもは自分で選んだ道を進んでいました。受験指導は思い通りにならないものです。子どもにまかせるしかありません。
高校や大学卒業後は、また新たな問題が立ちはだかる。でも、親の思い通りにならなくてもいいのかもしれません。そうです、好きにやらせる勇気だけ持てればいいのだと思います。
子どもと共に育つ、親のかたち
現代の子どもたちには、押しつけではなく「その気にさせる」アプローチが必要です。関心を持ち、共感し、タイミングを見て支援する。
これは昭和式の親にはなかなか難しいこと。逆にこれから子育ての中心になるZ世代にとっては受け入れやすいのかも。試行錯誤しながら寄り添うことが、今の親の役割なのかもしれません。
受験は、親子それぞれの成長の場でもあります。どうか一人で抱え込まず、誰かに話したり、自分を責めずに一息ついたりしてほしい。
合格しても不安が消えない時代だからこそ、子ども自身がそれを好きになる瞬間を待ってあげたいものです
まとめ
国は所得制限のある既存の高等教育(大学)支援策に加え、今年度から、多子世帯(扶養する子供が3人以上)に対して所得制限のない授業料・入学金の無償化策など経済面の支援を進めています。
こうした支援は充実化するべきですが、更に必要なのは、受験という、子どもにも親にとっても精神的にきつい教育システムについて、いかに対応していくか。子どもが望む人生を選択できる、学びの環境を整える必要があると思います。
そのためには、いかにして子どもがやりたいことを見つけ、熱中できるようになるかが重要ですし、サポートする親の支援も大切な視点だと感じています。
(執筆者:スモール・サン)