初めてのマイホーム。工事が始まってから戸惑うこと、いっぱいありますよね。誰もがマイホームで失敗したくない筈です。
このコラムは、400件以上の注文住宅の設計監理に携わった経験のある筆者が、住宅設計・工事において起こりやすいミス・注意するべきことと、その対策について解説します。
工事種別毎に、具体的に発生した(起こりうる)ミス・事故の原因と背景を解説するとともに、その解決策を簡潔にお伝えします。
今回は「あぁ!やってしまった!」注文住宅の事件簿、こうなる前に 「躯体工事編」です。
木造躯体が雨で濡れてしまった!!
このトラブル。よくあります。
わたしも、上棟立会いの際、予測していなかったゲリラ豪雨があり、柱梁、構造用合板が水浸しになった経験があります。施主より「これでは欠陥住宅ですよ!」と叫ばれました。
先に結論を言ってしまいますと、構造躯体の柱、梁等の木材には含水率という木材に水が染み込む限界性能があり、仮に雨で躯体が濡れてもしっかり乾燥させれば構造上や性能上、問題はございません。
ただ、現場で躯体が雨ざらしになるのは気分も悪いですよね。しっかりしたハウスメーカーであれば建て方は雨天時を避ける。雨予報であれば予めブルーシート等で養生する等、対策を行います。
思ったより室内が暗い!狭い!サッシを追加したい!!

これもよくある相談・トラブルになる事項です。
ハウスメーカーの人間は部屋の広さを理解していても、それを施主に空間認識していただく様に伝えることはなかなか難しいです。内観パースなどでイメージを持っていただけたとしても、広い狭いの感覚は個人の主観もあります。
部屋の広さのギャップに対しての未然防止策は、図面の打ち合わせの段階でメジャー等を用い、施主が空間の広さを実感しておくことです。私も設計打ち合わせの際はメジャーを必ず持って打ち合わせに臨み、施主に空間の広さを認識していただくことに重点を置いて打ち合わせを進めました。
部屋の明るさに関しては土地の条件、個人の主観等がありますのでなかなか未然防止は難しいところです。リビングに関しては自然光が入り、明るいに越したことはありませんが、寝室などは絶対条件ではないと思います。また、窓が多いほど断熱性は不利になります。
少しでも部屋・空間を明るくするコツとしては以下の方法があります。
・サッシは縦長の窓を用いたほうが自然光が奥まで届きやすい
・玄関、廊下、階段、洗面所のサッシの計画が空間の明るさをわける大事な配慮箇所
・天窓は通常の窓の3倍の採光量が採れる(ただし、遮熱を考慮し原則北側に設置)
・明度の低いクロスはアクセントで1面にする等、多用しない(基本は白系)
また、ご理解を頂きたいのが躯体の施工中は外部足場にネットを張り、室内も明るいクロス等の仕上を行っていないので暗く感じます。同様に部屋も躯体の状態では狭く感じることはあります。内装仕上まで施工すると、明るく、広い空間を感じると思います。
えっ!こんなところに壁・柱・下がり壁が出るの?

着工前に施主と綿密に打ち合わせを実施していても、施主が構造上必要な柱や壁、下がり壁が出ることを理解できておらず、現場が始まってから気づき、柱や下がり壁を無くせないかと相談されることがあります。私も大空間のリビングに下がり壁が出る説明をし、図面にも記載をしていますが、上棟してから施主に「下がり壁が出るなんて聞いていない」といったクレームを受けたことがあります。もちろん、構造上必要なものなので施工中に安易に変更などは出来ません。
最近では3Dパースや展開図等で予め何処に柱や下がり壁が現れるか伝えられるケースも多いですが、意外とこのトラブルはあります。ハウスメーカーの説明不足は否めませんが、説明出来る限界もあると思います。
トラブル防止のためには、施主が少しでも図面に疑念を持っていれば、ハウスメーカーに図面やパースを出して貰い、空間を理解しておくことだと考えています。
注文住宅は無いものを形にしますので、ハウスメーカーの営業、設計が綿密に打ち合わせを行っても施主との相違が出ることはあります。その際に一番大事なのはメーカーとの信頼関係・コミュニケーションだと思います。その信頼関係を構築しないと良い注文住宅は建てられないのではと考えています。
(執筆者:HK-HG 一級建築士・宅地建物取引士・行政書士・応急危険度判定士)