子どもにとってお弁当は、園生活の楽しみのひとつです。しかし、「食中毒が心配…」と不安に思う保護者の方も多いでしょう。
お弁当は作ってから食べるまで時間が空くため、衛生管理を怠ると細菌が繁殖しやすくなります。特に気温や湿度が高い季節は食材が傷みやすく、食中毒のリスクが上がるため注意が必要です。
そこで今回は、子どものお弁当で食中毒リスクが高いおかずと理由、暑い時期でも安心して入れられるおかずの具体例、さらに調理・保存の工夫ポイントまで徹底解説します。
正しい知識を押さえて、安全でおいしいお弁当作りを楽しみましょう。
食中毒リスクが高いお弁当おかずと理由

お弁当に入れるおかず選びで特に注意したいのが「水分」と「加熱不足」です。
細菌は、高温多湿な環境を好みます。そのため、水分が多い食材や十分に加熱されていない食品は、時間が経つほど傷みやすくなるのです。
ここでは、子どものお弁当に入れると食中毒リスクが高まりやすいおかずを具体例とともに解説します。
混ぜご飯・炊き込みご飯は水分で傷みやすい
お弁当の定番ではありますが、実はご飯に具材が混ざったメニューは注意が必要です。混ぜ込まれた肉や野菜から水分がにじみ出ることで、傷みやすくなってしまいます。
白ご飯が苦手で味のついたご飯を食べさせたい場合は、常温保存が可能なふりかけを使うと、衛生面でも安心です。
ただし、ゴミが出る、自分で開けるのが難しいといった理由で、ふりかけの持参がNGの園もあります。その場合は、海苔などの乾燥食品でアクセントを加える方法も検討しましょう。
生野菜・フルーツも水分が多く要注意
レタスやきゅうりなどの生野菜は、一見お弁当を彩る便利な食材に思えますが、実は不向きです。十分に洗っても土壌菌が残る場合があり、時間が経つと水分が出て細菌が繁殖しやすくなります。
また、ミニトマトは「お弁当に使いやすい」と思われがちですが、子どもが丸ごと食べると窒息の危険があるうえ、カットすると果汁が流れ出して菌が増える原因になる場合があるので注意しましょう。安全面・衛生面を考えると、夏のお弁当では避けた方が安心です。
参考:消費者庁「ミニトマトや大粒のブドウは4等分しましょう!」
加熱不足の卵料理はサルモネラ菌のリスク
卵焼きやゆで卵などは子どもに人気のおかずですが、加熱が不十分だとサルモネラ菌による食中毒のリスクがあります。感染すると腹痛・下痢・発熱などを引き起こし、体力の弱い子どもは重症化しやすいため注意が必要です。
サルモネラ菌は熱に弱いため、調理時には「中心温度75℃以上で1分以上加熱する」ことを基本にしましょう。卵焼きは中までしっかり火を通し、半熟は避けます。ゆで卵にする場合も「固ゆで」に仕上げるのが安心です。
卵サンドや半熟オムレツなど、常温保存に向かない料理は避け、しっかり加熱した卵料理を選びましょう。
参考:食品安全委員会「加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?」
汁気が多い煮物料理は菌が繁殖しやすい
肉じゃがや筑前煮などの煮物は、栄養バランスがよく家庭的なおかずですが、お弁当には不向きな場合があります。
理由は、汁気が多いこと。水分が残ったまま弁当箱に詰めると、温度が上がるにつれて細菌が繁殖しやすい環境をつくってしまうのです。
どうしても入れたいときは、
・しっかり再加熱して水分を飛ばす
・キッチンペーパーで余分な汁を吸い取る
といった工夫をすると良いでしょう。
煮物よりも、炒り煮や照り焼きのように水分を飛ばして仕上げる料理の方が、お弁当には安心です。
要冷蔵の食品・調味料を使ったおかずは要注意
加工品やマヨネーズを使った料理は便利ですが、本来ハムやちくわ、かまぼこなどの加工品は、冷蔵保存が必須です。常温で数時間置くと傷みやすく、細菌が繁殖する可能性があります。
加工品をお弁当に使う場合は、加熱してから入れる方が安心です。たとえば、ちくわはそのままでは危険ですが、磯辺揚げにすれば水分が減り、保存性も高まります。
一方で、ポテトサラダやマカロニサラダといった「マヨネーズ+水分の多い具材」のおかずは特にリスクが高い組み合わせです。じゃがいもやパスタから水分が出るため菌が繁殖しやすく、暑い時期のお弁当には不向きといえるでしょう。
子どものお弁当には、加工品をそのまま使うよりも、加熱済みの惣菜や冷凍食品をアレンジして活用した方が安全で手間も省けます。
暑い時期でも安心!子ども向けお弁当おかずの選び方と具体例

食中毒になりやすいおかずをご紹介してきましたが「じゃあ、何を入れれば良いの?」とお困りの方もいるでしょう。
迷わずにお弁当作りを進められるよう、子どものお弁当に入れやすいおかずを具体例を挙げて紹介します。
揚げ物は高温調理で安心
唐揚げや白身魚フライなどの揚げ物は、高温でしっかり火を通せるため菌が繁殖しにくいおかずです。油で揚げることで表面の水分も飛び、保存性が高まるのもメリット。夏のお弁当でも比較的安心して入れられるメニューです。
ただし、注意点もあります。じゃがいもを使ったコロッケは水分が多く、時間が経つと傷みやすいため避けた方が無難です。どうしても入れたいときは、冷凍食品の自然解凍タイプなど、衛生面を考慮した商品を活用すると良いでしょう。
また、揚げ物をお弁当に入れるときは、油をしっかり切ってから詰めることも大切です。油分が残ると酸化や菌の繁殖を助ける原因になるため、キッチンペーパーで余分な油を吸い取ってから入れるようにしましょう。
酢を使ったおかずは抗菌効果が期待できる
酢には細菌の繁殖を抑える働きがあり、夏のお弁当作りに役立つ調味料です。たとえば、きゅうりやわかめの酢の物はさっぱり食べやすく、暑い季節でも子どもが口にしやすい副菜になります。
ただし、酸味の強さを子どもが苦手に感じることもあります。その場合は、甘酢あんかけや南蛮漬けのように「しっかり加熱して仕上げる料理」を選ぶと安心です。酸味と加熱の両方で細菌が繁殖しにくくなり、見た目にも彩りが加わるため子どもが喜びやすいでしょう。
汁気が少ないおかずは菌が増えにくい
夏のお弁当では、水分の多いおかずを避けることが基本にします。細菌は湿った環境を好むため、汁気のある料理は繁殖の温床になりやすいからです。
その点、きんぴらごぼうやひじきの炒め煮のようにしっかり加熱して水分を飛ばす副菜は安心して入れられます。味がよく染み込み、時間が経ってもおいしさが保ちやすいのも嬉しいポイントです。
また、和え物を取り入れたい場合は、ごま和えやおかか和えをおすすめします。ごまやかつお節が余分な水分を吸ってくれるため、時間が経ってもベタつきにくく、子どもも食べやすいからです。
さらに、冷凍の枝豆やコーンを茹でて水気をよく切り、少量の塩を振るだけでも立派な副菜になります。彩りが加わり、お弁当全体が明るく仕上がる点も嬉しいポイントです。
食中毒を防ぐ子どものお弁当作り|基本ポイント
夏のお弁当向きのおかずを選んだとしても、それだけで食中毒を完全に予防できるわけではありません。
調理時のちょっとしたきっかけで、食中毒のリスクを高めてしまうケースもあります。
ここからは、安心・安全なお弁当作りのために、おかず選び以外で注意したいポイントを理解しましょう。
お弁当箱や調理器具を清潔に保つ
どれだけ加熱やおかず選びを気をつけても、お弁当箱や調理器具に菌が残っていれば食中毒の原因になります。夏のお弁当作りでは、まず「容器や道具を清潔に保つこと」が大切です。
お弁当箱はパッキンや仕切り部分に汚れが溜まりやすいため、分解して丁寧に洗い、完全に乾かすことが欠かせません。水分が残っていると菌の繁殖につながるので、夜のうちにしっかり乾燥させておくと安心です。
また、菜箸やまな板などの調理器具も注意しましょう。生肉や生魚を扱った器具をそのまま使うと、加熱済みのおかずに菌が移ってしまう可能性があります。用途ごとに器具を分ける、または都度洗浄・消毒する習慣をつけることが大切です。
さらに、詰める直前にお弁当箱をアルコールスプレーや熱湯で軽く除菌してから使うと、安全性が高まります。ほんのひと手間ですが、菌の繁殖を大きく防ぐ効果があり安心です。
ご飯やおかずを素手で触らない
手をしっかり洗っていても、目に見えない細菌は完全には落としきれません。素手でご飯やおかずに触れると菌が付着し、時間が経つほど繁殖してしまうリスクがあります。
そのため、おにぎりを握るときはラップを使い、詰める際は菜箸やトングを活用するのが基本です。最近では、使い捨て手袋をはめて作業する家庭も増えています。手袋を使えば衛生的に詰められるだけでなく、手の温度が食材に伝わらないため食中毒予防につながります。
特に子ども用のお弁当は量が少なく、食材同士が触れ合いやすいため、できるだけ直接手を触れない調理習慣をつけることが大切です。
ご飯やおかずはしっかり冷まして詰める
温かいままのおかずをお弁当箱に詰めると、ふたの内側に水滴がつき、高温多湿の環境をつくって細菌が繁殖しやすくなります。その結果、せっかく加熱調理した料理でも数時間後には傷みやすくなってしまうのです。
おかずやご飯は、必ず粗熱を取ってから詰めることが鉄則です。全体を早く冷ますためには、バットや皿に広げる、うちわや扇風機で風をあてるといった工夫を取り入れると良いでしょう。
また、1つずつしっかり冷ましてから詰めると、お弁当箱の中の温度上昇を防げます。温かいまま詰めるよりも食中毒リスクを大幅に下げられるだけでなく、おいしさが長持ちする点もメリットです。
おかず同士がくっつかないようにする
お弁当の中でおかず同士が直接触れると、水分や油分が移り合って細菌が繁殖しやすくなるリスクがあります。さらに、味やにおいが混ざって子どもが食べにくくなることもあるので、注意が必要です。
おかずをお弁当に詰めるときは、仕切りカップやバランを活用し、おかずごとにきちんと区切ることが基本にします。最近ではレタスの代わりに使える抗菌シートやシリコンカップなど、衛生面を考慮した便利アイテムも多く出ているので、いくつか準備しておくのも良いでしょう。
特に、汁気のあるおかずや油分の多い揚げ物は、他のおかずに影響を与えやすいため要注意です。カップの底にキッチンペーパーを敷くと水分を吸収でき、より清潔に保てます。
持ち運ぶ際は保冷剤を使うと安心
お弁当は持ち歩く時間が長くなるほど、内部の温度が上がり食材が傷みやすくなります。特に夏場は通園・通学の移動中や教室で置いておく時間が長くなるため、保冷対策が欠かせません。
最も手軽なのは、お弁当箱の上に保冷剤をのせて一緒に持ち運ぶ方法です。お弁当全体の温度上昇を防げるので、細菌の繁殖リスクを大幅に減らせます。さらに、保冷バッグに入れて持ち運べば、保冷効果が長持ちして安心です。
注意点としては、保冷剤が直接食材に触れないようにすること。水滴がついて中身が湿ると逆効果になるため、ハンカチやタオルで包んで使うと良いでしょう。
また、登園・通学時間が長いお子さんの場合は、冷凍ゼリーや凍らせた飲み物を保冷剤代わりに使うのもおすすめです。お弁当を守りつつ、昼食時にはデザートや飲み物として楽しめるので助かります。
まとめ|お弁当に食中毒になりやすいおかずは避け安全に楽しもう
温かい時期のお弁当は、気温や湿度の影響で食材が傷みやすく、食中毒のリスクが高まります。だからこそ、おかず選び・調理方法・保存方法の3つを徹底することが大切です。
お弁当は、子どもにとって楽しみのひとつ。安全でおいしい状態で届ける工夫を取り入れれば、食中毒を防ぐだけでなく、親の安心感にもつながります。
小さな工夫を積み重ね、お子さんが「今日のお弁当おいしかった!」と笑顔で言ってくれる時間を守りましょう。
(執筆者:渡辺ゆき)


