昔の主婦に年金がなかったってホント? ~家族と年金のお話~

ニュース&トピックス
画像:昭和の家族の風景(Canvaにて生成)
スポンサーリンク

昔の年金は「軍人さんたちのもの」だった

いまでは誰もがもらえる年金。でも、日本で最初に「年金みたいな制度」ができたのは、明治時代初期のこと。もらえたのは、軍隊で働いていた人やその遺族などだけでした。

これを「恩給(おんきゅう)」といいます。いまでいうと、自衛隊や警察などの仕事をしている人が、退職した後にもらう年金みたいなものです。

いまでは考えられませんが、昔の「主婦」は基本的に年金なんてもらえませんでした。国は「夫が働いて、妻を養うのが当たり前」と考えていたからです。

こうした考え方は日本人の民族性にも合致し、独特の家族形態を作り上げていきました。

戦後の年金も、働く人だけのものだった

戦争が終わってから、少しずつ国は「働いた人の老後を守ろう」と考えるようになり、工場などで働く人のための年金制度ができました。

でも、このときも主婦は対象外。外で働いていないと、国の年金には入れなかったのです。

【1961年~】「みんな年金に入れるよ」と言われたけど…

1961年に「国民みんなが年金に入れる制度」いわゆる「国民皆年金」が始まりました。これで、会社に勤めていない自営業者や農家も年金に入れるようになりました。

でも、実際は「入りたい人だけどうぞ」という感じだったので、家で子育てをしていた主婦の中には、よくわからないまま年金に入らなかった人もたくさんいたのです。

【1985年~】「主婦にも年金をあげましょう」という時代に

1985年、日本の年金制度は大きく変わりました。専業主婦も、夫が会社で年金に入っていれば、実質的に奥さんも自動的に年金に入ったことになる、という仕組みができました。これが「第3号被保険者制度」です。

つまりこの時から、「働いていなくても年金がもらえる主婦」が日本に誕生したのです。ときは高度経済成長まっただなか。年金額も物価上昇に伴い、うなぎ上りに上がっていったのです。

ほどなくバブル経済が日本社会に押し寄せました。日本の人口が激減しいずれ1億人を切るーといった状況が予想されるような時代が来るとは、当時は誰もが想像できませんでした。

なぜ、それまで主婦には年金がなかったの?

昔の日本では、「夫が働いて、妻は家庭を守る」という考えがとても強く社会に浸透していました。ある意味、女性もそれを受け入れていた。

だから、国の制度も「働く人=年金の対象」「家にいる主婦=対象外」という作りになっていました。戦後復興から立ち上がり、経済成長を続ける日本にとって、国民全体にとって都合のいいシステムでもあったのです。

でも、時代が変わり、女性も働くようになってきて、専業主婦にも老後のお金が必要だと指摘されるようになりました。

さらに女性の人権尊重の機運が、欧米に遅れながらも日本で浸透を始めたことも大きかったと思います。男女平等の理念からすると、あまりにも男性重視の社会だと映っていたのです。

今では「ちょっとズルい?」と言われることも

今は共働きが当たり前になってきて、「なんで専業主婦だけ年金を払わなくてももらえるの?」と不公平に思う人もいます。実際、この制度を見直そうという話も出ています。

女性の社会進出も進み、女性の立場も多様化しています。専業主婦中心だった単一的な社会から、世界潮流に沿って日本社会も大きく変化せざるを得ない状況になりました。

【まとめ】昔の主婦は、年金の対象じゃなかった

  • 昔の年金は軍人さんのためのもの
  • 戦後も、外で働く人しか年金に入れなかった
  • 1961年に「国民みんなが年金へ」となったが、主婦は入りづらかった
  • 1985年から、ようやく専業主婦にも年金が用意された

次回予告:「専業主婦の黄金時代」ってどんな時代?

次は、専業主婦が一番恵まれていたと言われる1985年から2000年代のお話しです。どうしてその時代に豊かな専業主婦が増えたのか。実は現在のワンオペ育児問題の基礎的枠組みが、この時代に形作られていた可能性があるのです。

(執筆者:スモール・サン)