家づくりを成功させる資金計画と住宅ローン、工事請負契約の基礎知識

ニュース&トピックス
(画像:AI・Canvaにて作成)

「家を建てたいけど、お金のことを考えると不安で一歩踏み出せない…」

多くの方が家づくりで感じる最大の不安は、資金面ではないでしょうか。数千万円という大きな買い物は人生でもそう何度もあるものではなく、住宅ローンの仕組みや契約の流れなど、わからないことが多すぎて頭を抱えてしまいます。

特に資金計画や住宅ローンの審査、工事請負契約といった専門的な部分は、適切な知識がないと将来的に大きな負担を背負ってしまう可能性もあります。しかし、基本的な流れとポイントを押さえておけば、無理のない資金計画を立て、安心して契約を進めることができます。

この記事では、「資金計画書作成」「住宅ローン仮審査申請」「工事請負契約締結」について詳しく解説します。これらの知識を身につければ、将来の生活も見据えた無理のない資金計画を立て、安心して家づくりを進めることができるでしょう。

スポンサーリンク

注文住宅の資金計画の立て方

家づくりで最初に行うべきなのが資金計画です。適切な資金計画を立てることで、予算オーバーを防ぎ、将来の生活にも余裕を持つことができます。

注文住宅にかかる費用の仕組み

注文住宅を建てる際には、主に以下の3つの費用がかかります

  1. 土地取得費用
    • 土地代
    • 土地の改良費用(整備されていない土地や地盤が軟弱な場合)
  2. 建物建築費用
    • 本体工事費(建物本体にかかる費用)
    • 付帯工事費(外構や水道などの引き込み工事など)
  3. 諸費用
    • 建物と土地の取得時にかかる諸費用(不動産取得税、登録免許税など)
    • 住宅ローンの契約時にかかる諸費用(手数料など)
    • 引っ越し費用、家具購入費などの関連費用

住宅金融支援機構の調査によると、土地を購入して注文住宅を建てたときの全国平均資金は4,455万円で、その内訳は建築費用が3,010.6万円、土地取得費用が1,444.9万円となっています。

諸費用の目安は、住宅購入費用(建築代+土地代)の10〜12%程度です。意外と大きな金額になるため、必ず計画に含めておきましょう。

頭金の準備と自己資金の考え方

頭金とは、住宅購入費用のうち、現金で支払う自己資金のことです。頭金を用意する主なメリットは

  • 住宅ローンの借入額を抑えられる
  • 総支払額を少なくできる
  • 毎月の返済負担を軽減できる

全国の平均的な頭金の額と割合は以下の通りです

  • 土地付き注文住宅:平均412.3万円(住宅購入費用の9.3%)
  • 注文住宅(建物のみ):平均596.6万円(住宅購入費用の16.7%)

頭金の目安は住宅購入費用の1〜2割程度ですが、無理して貯金を全額頭金に回すのではなく、病気や失業などの不測の事態に備えて、ある程度の貯金は残しておくことが大切です。

無理のない返済計画の立て方

住宅ローンの返済計画を立てる際に重要なのは「返済負担率」です。これは年収に対する年間の返済額の割合を示す比率で、一般的には以下のように考えます:

  • 金融機関の上限基準:おおむね30〜40%
  • 無理のない水準:25%以内
  • 理想的な水準:20%以内

例えば、年収600万円の場合、理想的な返済額は年間120万円(月10万円)以内となります。

返済期間については、国土交通省の調査によると、住宅ローンの返済期間は「35年以上」がもっとも多く、全体の72.5%を占めています。平均返済期間は全国で32.9年、三大都市圏で32.3年となっています。

返済期間が短いほど毎月の返済額は増えるため、高額の融資を受ける場合は返済期間にゆとりを持たせることも検討しましょう。ただし、返済期間が長いと老後資金をためる期間が短くなる点にも注意が必要です。

費用の支払いタイミングと資金繰り

注文住宅の場合、費用を支払うタイミングは複数回にわたります。一般的な支払いの流れは以下の通りです。

土地の購入

  • 土地の契約時:手付金
  • 引き渡し前:残代金

建物の建築

  • 注文住宅の契約時… 手付金
  • 着工時… 着工金
  • 中間時… 中間金または上棟金
  • 引き渡し時… 残代金

通常、住宅ローンの融資実行は建物の引き渡し時ですが、それまでの支払いは現金で行う必要があります。自己資金で用意できない場合は、「土地先行融資」や「つなぎ融資」という制度を利用することができます。

各支払いのタイミングと金額は、会社によって異なるため、契約前に十分に確認しておきましょう。

予想外の支出に備える

資金計画で見落としがちなのが「見積書と資金計画書の違い」です。建築会社から提示される見積書には、建築会社に支払う費用だけが記載されていることが多く、金融機関への手数料や各種税金などが含まれていないこともあります。

また、入居後の生活資金や不測の事態(入院や失業など)に備えた資金も考慮しておく必要があります。生活ギリギリの返済プランは避け、余裕を持った資金計画を立てましょう。

住宅ローン仮審査申請のポイント

家づくりを進める上で重要なのが住宅ローンの仮審査です。ここでしっかりと準備しておくことで、後々の本審査をスムーズに進めることができます。

住宅ローンの種類と選び方

住宅ローンには主に以下の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。

1. 全期間固定金利型

  • 特徴… 借入から完済まで金利が変わらない
  • メリット… 先々の返済額が確定するため、計画が立てやすい
  • デメリット… 他の金利タイプより金利が高めに設定されている

2. 変動金利型

  • 特徴… 一定期間ごとに金利が見直される
  • メリット… 固定金利型よりも金利が低く設定されている
  • デメリット… 金利上昇時に返済額が増える可能性があり、将来の見通しが立てづらい

3. 期間選択固定金利型(金利ミックス型)

  • 特徴… 一定期間は固定金利で、その後は変動・固定を選択できる
  • メリット… 最初の固定期間は返済額が確定するため安心
  • デメリット… 固定期間終了後に金利が上昇すると返済額が増える可能性がある

どの金利タイプを選ぶかは、将来の金利動向予測や自分のリスク許容度によって異なります。安定志向なら固定金利型、金利上昇リスクを許容できるなら変動金利型が向いています。

仮審査と本審査の違いと流れ

住宅ローンの審査には「仮審査」と「本審査」の2段階があります。

仮審査(事前審査)

  • 目的… 本審査の前に借入可能かどうかの目安を知るため
  • タイミング… 大まかな予算や希望の住宅が決まった段階
  • 必要書類… 本人確認書類、収入証明書、残高証明書(ローンがある場合)など
  • 特徴… 契約前に行うため、断られてもキャンセル料などは発生しない

本審査

  • 目的… 実際に融資を受けるための正式な審査
  • タイミング… 工務店やハウスメーカーと契約を結んだ後
  • 必要書類… 仮審査の書類に加え、印鑑証明書、住民票、工事請負契約書などが必要
  • 特徴… 契約後に行うため、融資が受けられないとキャンセル料が発生する場合がある

理想的な流れとしては、まず仮審査で借入可能額を確認し、その範囲内でプランを固めて、工事請負契約を結んでから本審査を受けるというステップになります。

仮審査に必要な書類と準備の仕方

仮審査では一般的に以下の書類が必要です。

  • 本人確認書類… 運転免許証やパスポートなど
  • 収入証明書… 源泉徴収票や確定申告書の控えなど
  • 他のローン残高証明書… 自動車ローンやカードローンがある場合
  • 土地の資料… 購入予定の土地がある場合
  • 注文住宅の見積書… ある程度プランが固まっている場合

金融機関によっては、見積書が必要ない場合もあります。予算の目安がついたら早めに仮審査を申し込むのがおすすめです。万が一、希望金額で審査が通らなかった場合でも、早い段階ならプランの修正がしやすくなります。

審査のポイントと通りやすくするコツ

住宅ローンの審査では主に以下の点がチェックされます。

  • 返済能力… 年収や職業、勤続年数など
  • 返済負担率… 年収に対する年間返済額の割合
  • 信用情報… 過去の借入履歴や返済状況
  • 勤務先の安定性… 会社の規模や業種、雇用形態
  • 物件の担保価値… 土地や建物の評価額

審査を通りやすくするコツは

  • 返済負担率を適正に保つ… 理想は年収の20%以内、最大でも35%以内に
  • 他のローンを減らす… 審査前にカードローンなどを完済しておく
  • 安定した収入を示す… できるだけ長い勤続年数や正社員であることをアピール
  • 貯蓄があることを示す… 頭金の準備ができていることを示す
  • 信用情報に傷をつけない… クレジットカードの支払い遅延などに注意

また、住宅ローン特約(住宅ローンの審査が通らなかった場合に契約を解除できる特約)を工事請負契約に入れておくことも重要です。

工事請負契約の基礎知識

住宅ローンの目処がついたら、いよいよ工事請負契約の締結に進みます。これは家づくりにおける最も重要な契約の一つです。

工事請負契約とは何か

工事請負契約とは、注文住宅の建築を依頼するときに、施主とハウスメーカーとの間で結ぶ契約のことです。「建築請負契約」と呼ばれることもあります。

建設業法第19条によって、ハウスメーカーには契約書の作成が義務付けられており、工事内容や請負代金の額、工事の着手・完成時期、支払い条件などを明記する必要があります。

工事請負契約書が作成されることで、工事内容をめぐってトラブルが発生することを防ぎ、万が一トラブルが発生したときもどのように対応すればよいかが明確になります。

契約書のチェックポイント

工事請負契約書には様々な事項が記載されますが、特に以下の点をしっかりチェックしましょう。

  • 工事の日程… 着工日、完成日、引き渡し日
  • 工事内容… どのような仕様で家が建てられるか
  • 工事代金の支払い時期と金額… いつ、いくら支払うか
  • キャンセル時の違約金に関する取り決め… 解約する場合の条件
  • 住宅ローン特約の期限… 住宅ローンが通らなかった場合の契約解除条件
  • 保証やアフターサービスの内容… アフターケアの範囲や期間

これらの内容に不明点や疑問点があれば、遠慮せずにハウスメーカーの担当者に確認しましょう。後々のトラブルを防ぐためにも重要です。

契約締結時の注意点

工事請負契約を締結する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 約款や仕様書などの内容も事前にチェック… 契約書の添付書類として提出される約款や見積書、設計図書、仕様書などの内容も併せて確認する
  • 建築プランを詳しく決めてから契約する… 「とりあえず先に契約」は避け、詳しい建築プランを決めてから契約を結ぶ
  • 住宅ローン特約を付ける… 住宅ローンの審査が通らなかった場合に、工事請負契約を解除できる特約を必ず付けておく
  • 変更・追加工事の取り扱いを確認… 後から設計変更や追加工事が生じた場合の手続きや費用計算方法を確認しておく
  • 瑕疵担保責任の内容を確認… 住宅に欠陥があった場合の保証内容や期間を確認する

契約後のスケジュールと流れ

工事請負契約を締結した後の一般的な流れは以下の通りです。

  1. 住宅ローン本審査の申し込み… 工事請負契約書を持って金融機関に本審査を申し込む
  2. 本審査通過後、着工… 審査が通れば、契約で定めた着工日から工事が開始される
  3. 中間金の支払い(上棟時など)… 工事の進捗に合わせて中間金を支払う
  4. 完成・引き渡し… 工事が完了したら、検査を経て引き渡しとなる。このタイミングで住宅ローンの融資が実行される
  5. 住宅ローンの返済開始… 引き渡し後、通常2ヶ月以内に住宅ローンの返済が始まる

契約後もプランの変更は可能ですが、変更内容によっては追加費用や工期の延長が生じることがあります。また、大幅な変更の場合は変更契約を結ぶことになるため、できるだけ契約前にプランを固めておくことが望ましいです。

まとめ 資金計画から契約までの流れ

家づくりの資金計画から契約までの流れをおさらいしておきましょう。

  1. 資金計画の立案
    • 総予算の決定(土地代、建築費、諸費用)
    • 頭金の準備
    • 無理のない返済計画の検討
  2. 住宅ローン仮審査の申し込み
    • 借入可能額の確認
    • 金利タイプの選択
    • 必要書類の準備と提出
  3. 建築プランの確定
    • 仮審査の結果を踏まえた予算内のプラン作成
    • 仕様や設備の決定
    • 最終的な見積りの確認
  4. 工事請負契約の締結
    • 契約書のチェック
    • 住宅ローン特約の確認
    • 契約書の取り交わし
  5. 住宅ローン本審査の申し込み
    • 必要書類の提出
    • 審査結果の確認
    • ローン契約の締結

家づくりにおける資金計画と契約は、将来の生活を大きく左右する重要なステップです。無理のない計画を立て、契約内容をしっかり確認することで、安心して理想の家づくりを進めることができます。

資金計画・契約のチェックリスト

 □ 住宅購入の総費用(土地代、建築費、諸費用)を把握した

 □ 頭金の額と住宅ローンの借入額を決定した

 □ 返済負担率を年収の25%以内に抑える計画を立てた

 □ 住宅ローンの金利タイプを検討し選択した

 □ 住宅ローンの仮審査を受け、借入可能額を確認した 

□ 工事請負契約書の内容を細部までチェックした

 □ 契約書に住宅ローン特約が含まれていることを確認した

 □ 引き渡しから返済開始までのスケジュールを把握した

理想の家づくりを実現するためには、資金面の計画と契約内容の確認が極めて重要です。この記事の内容を参考に、安心して家づくりを進めていきましょう。

(執筆者:あおちゃん)