「え?こんなに費用がかかるの?」 初めての家づくりで知っておきたい造成工事の全知識

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(イラスト:Canva・AIにて作成)

「造成工事で100万円以上…?」「これって本当に必要なの?」―住宅メーカーから見積もりをもらって、このような驚きや疑問を感じたことはありませんか?

マイホーム計画中のご夫婦、特に奥様が頭を悩ませるのが、この「見えない部分」にかかる費用です。キッチンやお風呂、フローリングなど目に見える部分にはこだわりたいのに、「造成工事」という聞きなれない工事にたくさんのお金がかかるのはなぜ?削れないの?と思うのは当然です。

見積もりを見て「これって本当に全部必要なの?」と疑問に思っても、専門的な内容だけに質問しづらいという方も多いのではないでしょうか。この記事では、造成工事が具体的に何をする工事なのか、なぜ必要なのか、そして本当に価格に見合う価値があるのかを、家づくり初心者の方にもわかりやすく解説します。

見積もり書の中で大きな割合を占めるこの工事について正しく理解することで、「この部分は省けるのか、それとも絶対に必要なのか」を判断できるようになり、より賢い家づくりの第一歩を踏み出せるでしょう。

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そもそも造成工事って何?なぜ必要なの?

「造成工事」と聞いても、ピンとこない方が多いのではないでしょうか。簡単に言うと、造成工事とは家を建てる前に、土地を家が建てられる状態にする工事のことです。

例えば、傾斜のある土地を平らにしたり、水はけが悪い土地を改良したり、地盤が弱い土地を強化したりする工事がこれにあたります。言ってみれば、赤ちゃんを迎えるために部屋を整える「準備」のような工程です。

「うちの土地はもう更地だから必要ないかも?」と思うかもしれませんが、見た目が平らでも地盤が弱かったり、地下に問題があったりすることもあります。実は、土地の約7割は何らかの造成工事が必要と言われています。

一般的な戸建て住宅の造成工事費用は、条件にもよりますが50万円〜200万円程度が相場です。地盤改良が必要になると更に高額になりますが、これは後々の安全性を考えると決して高すぎる金額ではありません。

では、具体的に造成工事の4つの工程について、それぞれどんな作業なのか、なぜ必要なのか、費用対効果は本当にあるのか、一緒に見ていきましょう。

敷地整地(造成工事)省略すると家が傾く可能性も

敷地整地は、土地を平らに整える工事です。「うちの土地はもう平らだから必要ないかも?」と思われるかもしれませんが、見た目が平らでも微妙な傾斜や凹凸があることがほとんどです。

なぜ必要?費用対効果は?

敷地整地が必要な理由は以下の通りです。

  • 家の安定性… 平らでない地盤に家を建てると、時間とともに家が傾き、ドアや窓がきちんと閉まらなくなったり、壁や床にひび割れが生じたりします。
  • 水害リスクの軽減… 適切な勾配を付けることで、雨水が家の周りに溜まらないようにします。
  • 土地の有効活用… 庭やカーポートなど、外部空間を有効活用するためにも平らな土地は必要です。

初期費用はかかりますが、将来的なトラブルや修理費用を考えると、決して省略できない工程です。

どんな作業をするの?

  • 切土… 高い部分の土を削って低い部分に移動させる方法
  • 盛土… 外部から土を持ち込んで低い部分を高くする方法

現場で見かけたら「この土はどこから持ってきたものですか?」「転圧はどのくらいの強度で行いますか?」など質問してみましょう。

地盤改良(必要時)見積もりの中で一番驚く費用かも

地盤改良は、見積もりを見たときに「え?こんなにかかるの!?」と最も驚くことが多い工事です。特に予算を抑えたいとき、「この工事、本当に必要?」と迷われる方も多いでしょう。

本当に必要?費用対効果は?

地盤改良が必要かどうかは、必ず地盤調査をしてから判断します。地盤が弱いと判定された場合は絶対に省略できません。その理由は

  • 家が傾く・沈む… 弱い地盤に建てると、数年後に家が傾いたり、沈んだりします。修正工事は1000万円以上かかることも。
  • 地震のリスク… 地盤が弱いと地震の揺れが増幅され、建物への被害が大きくなります。
  • 保険適用外… 地盤調査で改良が必要と判断されたのに施工しなかった場合、将来的な保険の適用外になることも。

「地盤改良って高いなぁ…」と感じるかもしれませんが、家の一生を考えると、実は最も費用対効果の高い投資と言えるのです。

こんな土地は要注意!

  • 以前が田んぼや池だった土地
  • 埋立地や河川の近く
  • 造成されたばかりの新しい土地

もし心配なら、必ず地盤調査を依頼しましょう。調査費用は5〜10万円程度です。

地縄張り(建物位置出し)絶対に立ち会うべき重要な工程

地縄張りは、「家をどこに建てるか」を実際の土地の上で示す作業です。「図面で位置は決まってるから大丈夫かな?」と思うかもしれませんが、これは家の位置や向きを最終決定する非常に重要な工程です。

なぜ必要?省略できる?

地縄張りは省略できない工程です。その理由は

  • イメージと現実のギャップ確認… 図面だけではわからない実際のスケール感を確認できます。「思ったより狭い/広い」といった発見があることも。実際、地縄張りで立ち会った際に「こんなに狭いの!?」と驚き、間取りを見直したというケースも少なくありません。
  • 法的規制のチェック… 道路からの距離や隣地との間隔など、法律で定められた基準を満たしているか現地で確認します。これを怠ると、後から行政から是正命令が出るリスクもあります。
  • 日当たり・眺望の最終確認… 家の向きが少し変わるだけで、日当たりや眺めが大きく変わることがあります。特に「南向きのリビングが希望」という方は、本当に日当たりが良くなるか確認する絶好の機会です。

この工程にしっかり立ち会うことで、「入居してから気づく不満」を事前に防げるのです。費用は5〜10万円程度で、価格以上の価値があります。

どんな作業をするの?

地縄張りは通常、以下のような手順で行われます。

  1. 境界の確認… まず土地の境界を正確に確認します
  2. 測量… 土地の正確な寸法を測ります
  3. 建物の位置決め… 設計図に基づいて建物の輪郭を地面に描きます
  4. 杭と縄… 杭を打ち、縄を張って建物の位置を視覚的に示します

この工程は数時間で終わることが多いですが、後々の生活を大きく左右する重要な工程です。「忙しいから…」と言って立ち会いをスキップするのはやめましょう。

立ち会い時のチェックポイント

地縄張りには必ず立ち会い、以下の点を確認しましょう。

  • 隣地との距離… 「ここが隣の家との境界です」と説明してもらい、距離感を確認。プライバシーが確保できるか、圧迫感はないかをチェックしましょう。
  • 日当たり… 朝・昼・夕方の太陽の位置を考慮して、窓の位置や向きが適切か確認。可能であれば、朝や夕方の時間帯に立ち会うのもおすすめです。
  • 眺望・プライバシー… 立つ位置を変えながら、将来の窓からの景色や視線を想像。「この窓からは何が見えますか?」と質問してみましょう。
  • 庭やアプローチのスペース… 車の駐車や子どもの遊び場として十分なスペースがあるか。「ここに車を停めるとして、ドアは十分開きますか?」など具体的なイメージを持ちましょう。

「ここをもう少し右/左にずらせますか?」「この向きを変えることは可能ですか?」など、遠慮せずに質問してみましょう。この段階なら、比較的容易に調整できることが多いです。

遣り方(基準線・基準高さ設定)家の高さが決まる重要工程

遣り方(やりかた)は、聞き慣れない言葉かもしれませんが、「家の高さや正確な位置の基準となる木枠を設置する作業」のことです。「地縄張りで位置は決まったのでは?」と思うかもしれませんが、遣り方はさらに精密に基準を定める大切な工程です。

なぜ必要?省略できる?

遣り方は絶対に省略できない工程です。その理由は

  • 1ミリの誤差も許されない… 家の骨格となる位置と高さを正確に決めるために不可欠です。この工程が不正確だと、建物全体が歪んでしまう可能性があります。
  • 家の高さが決まる… 床の高さや天井の高さ、玄関の段差など、生活に直結する「高さ」がここで決まります。「階段の上り降りがつらい」「窓から景色が見えない」といった将来の不満を防ぐためにも重要です。
  • 建物全体の精度に影響… この工程での誤差は、建物全体の精度に大きく影響します。家の精度は1つ1つの工程の積み重ねで決まるのです。

「数ミリくらいの誤差なら…」と思うかもしれませんが、その小さな誤差が積み重なると、完成時には数センチの歪みになることも。特に高さの設定は、玄関の上がりやすさや窓からの景色など、日々の生活の快適さに直結します。

費用対効果は?

遣り方の費用自体はそれほど高くありません(一般的に10〜15万円程度)。この工程でしっかりと基準を設定することで

  • 床の水平が保たれ、家具の設置がスムーズに
  • ドアや窓の開閉がスムーズに
  • 外部からの雨水の侵入を防ぐ適切な高さ設定

など、住みやすさに直結するメリットが得られます。省略したり手を抜いたりすべき工程ではありません。

どんな作業をするの?

遣り方は以下のような手順で行われます。

  1. 基準点の設置… まず正確な水平を出すための基準器を設置
  2. 水平出し… 水準器を使って完全な水平を確保しながら木枠を組み立て
  3. 高さの設定… 1階の床の高さや基礎の天端(上面)の高さを木枠にマーキング
  4. 中心線の設定… 柱や壁の中心となる線を木枠の上に表示

一見すると木の枠を組んでいるだけに見えるかもしれませんが、ミリ単位の精度が求められる重要な作業です。

立ち会い時のチェックポイント

この工程にも可能であれば立ち会い、以下の点を確認しましょう。

  • 道路からの高さ… 「道路から玄関までの高さは何段になりますか?」と質問してみましょう。高齢の方や小さなお子さんがいる家庭では、あまり高すぎると不便です。標準は3〜4段程度ですが、バリアフリーを考えるなら2段以下が理想的です。
  • 雨水の流れ… 「雨水はどのように敷地外に排水されるのですか?」と確認しましょう。適切な排水計画がないと、大雨の際に庭が水浸しになることも。
  • 窓の高さ… 主要な窓(特にリビングや寝室)の高さから、どんな景色が見えるかイメージしてみましょう。「座った状態でも外の景色が見えますか?」と確認すると良いでしょう。

「これだけは気をつけて!」造成工事の5つの注意点

①業者選びで失敗しないために

造成工事の良し悪しは、業者選びで9割決まると言っても過言ではありません。

  • 実績と経験… 「この地域での施工実績はどのくらいありますか?」と質問してみましょう。
  • 説明の丁寧さ… 専門用語をわかりやすく説明してくれる業者は信頼できます。
  • 適正価格… 極端に安い業者は手抜き工事の危険性も。3社以上から見積もりを取りましょう。

②工事の時期は慎重に選ぶ

  • 避けるべき時期… 梅雨期(6〜7月)や降雪期は避けるのがベスト
  • おすすめの時期… 秋(9〜11月)は天候が安定していておすすめ

③法的手続きはプロに任せつつ確認も

「必要な許可はすべて取得済みですか?」と業者に確認しておくと安心です。後から問題が発覚すると、最悪の場合は工事のやり直しも。

④近隣トラブルを防ぐために

  • 事前の挨拶… 工事開始前に周辺住民への挨拶を忘れずに
  • 工事時間の配慮… 早朝や夜間の騒音は避ける(業者にも徹底)

⑤見積もりの内訳を細かくチェック

  • 項目ごとの内訳… 「一式」などのあいまいな表記ではなく、細かい内訳を出してもらう
  • 追加費用の可能性… 「工事中に想定外の状況が出た場合、追加費用はどれくらい発生する可能性がありますか?」と質問

見積もりの算出法

マイホーム計画の参考として、造成工事に関する一般的な費用感をご紹介します。これから家づくりを始める方は、予算計画の参考にしてください。

材料費と施工費

  • 敷地整地
    • 切土・盛土:1平方メートルあたり 800円〜1,500円
    • 良質土:1立方メートルあたり 3,000円〜5,000円
    • 転圧作業:1平方メートルあたり 500円〜800円
  • 地盤改良
    • 表層改良:1平方メートルあたり 4,000円〜6,000円
    • 柱状改良:1本あたり 10,000円〜20,000円(深さにより変動)
    • 鋼管杭:1本あたり 30,000円〜50,000円(長さにより変動)
  • 地縄張り・遣り方
    • 測量費用:5万円〜10万円
    • 木材費:2万円〜4万円
    • 設置工賃:8万円〜10万円

工程別の費用相場

  • 敷地整地: 30万円〜60万円程度
    • 平坦な土地の場合:低め
    • 傾斜がある土地の場合:高め
    • 広さによって大きく変動(30坪の場合の目安)
  • 地盤改良(必要時): 50万円〜300万円程度
    • 表層改良工法:50万円〜100万円
    • 柱状改良工法:100万円〜200万円
    • 鋼管杭工法:200万円〜300万円
  • 地縄張り(建物位置出し): 5万円〜10万円程度
  • 遣り方(基準線・基準高さ設定): 10万円〜15万円程度

職人の日当

  • 造成工事作業員:15,000円〜20,000円/日
  • 重機オペレーター:20,000円〜25,000円/日
  • 測量技術者:25,000円〜30,000円/日

追加費用が発生しやすいケース

  • 残土処分費:残土が出た場合、2tトラック1台分で約1万円〜2万円
  • 伐採・伐根:1平方メートルあたり約1,000円〜1,500円
  • 擁壁工事:1平方メートルあたり約7万円〜10万円
  • 排水設備:集水桝1箇所 2万円〜3万円、配管 1メートルあたり 3,000円〜5,000円

一般的な住宅(30坪程度)の場合、造成工事の費用総額は、地盤状況にもよりますが、以下の目安となります。

  • 地盤改良不要の場合:50万円〜80万円程度
  • 地盤改良が必要な場合:100万円〜300万円程度

※上記はあくまで一般的な目安であり、使用する材料のグレードや施工条件、地域・施工会社によって前後する場合があります。実際の費用については必ず施工業者にご確認ください。

費用を抑えるポイント

造成工事の費用を抑えるには、以下のポイントに注意しましょう。

  • 複数の業者から見積もりを取る… 3社以上比較することで適正価格がわかります
  • 時期を選ぶ… 雨の多い時期を避けることで余計な工期延長や追加費用を防げます
  • 工事範囲の最適化… 必要最小限の範囲に絞ることで費用を抑えられます
  • 残土処分の方法… 可能であれば敷地内で再利用することで処分費を節約できます
  • 仲介を挟まない… 直接施工業者と契約することで中間マージンを削減できます

費用面での不安がある場合は、「この工事は本当に必要ですか?」「もっと費用を抑える方法はありますか?」など、遠慮せずに業者に質問してみましょう。安全性を確保した上で、合理的な費用で工事を進めることが大切です。

まとめ これで安心!造成工事チェックリスト

造成工事は家づくりの土台となる大切な工程です。目に見えなくなる部分だからこそ、しっかりと確認し、適切な施工がされることが、安全で快適な住まいへの第一歩となります。

造成工事の現場チェックリスト

□ 地盤調査の報告書は見せてもらったか?弱い部分はどこか確認

 □ 整地の土はどこから持ってきたものか?良質な土かを確認

 □ 土はしっかり転圧(踏み固め)されているか?

 □ 雨が降ったときの排水計画は説明してもらったか?

 □ 地縄張り(建物の位置出し)は立ち会ったか?

 □ 遣り方の高さ設定は適切か?

 □ 近隣への挨拶や配慮はされているか?

 □ 保証内容はどうなっているか?

 □ 追加費用が発生する可能性はないか?

「少しくらいならいいか…」と思って見逃してしまうと、後々大きな問題になることがあります。「見えない部分だから」と妥協せず、この記事で学んだポイントをしっかりチェックしてください。

造成工事の費用は決して安くありません。でも、家族が安心して暮らせる家づくりのためには、必要な投資です。「この工事は何のため?」「これは省略できる?」と積極的に質問し、納得した上で進めることが大切です。

素敵なマイホームづくりの成功を心から応援しています!

(執筆者:あおちゃん)