【基礎工事②】型枠工事とコンクリート打設のポイント 強度を左右する工程の現場確認法

B. 基礎工事
(画像:Canva・AIにて作成)

家づくりの見積もりを見ると、なぜ基礎工事にこれほどお金がかかるのか疑問に思いますよね。「目に見えなくなる部分なのに…」と感じる方も多いのではないでしょうか。

基礎工事は、家の寿命を左右する非常に重要な工程です。特に型枠工事とコンクリート打設は、基礎の形を決める決定的な段階。なのに完成後には見えなくなるため、「本当にしっかりした工事ができているのか」と不安になるのも当然です。

この記事では、前回の「掘削〜鉄筋工事」に続く工程として、「型枠組み立て」から「コンクリート打設」、そして「型枠解体・養生」までの流れを詳しく解説します。


この記事は基礎工事シリーズ第2回です。まだ読んでいない方はこちらもどうぞ

  •   基礎工事①:掘削〜鉄筋工事編
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型枠とは?基礎の「形」を決める重要な枠組み

型枠とは、コンクリートを流し込むための「型」のことです。コンクリートは液体状で流し込まれ、数日かけて固まっていきます。その間、決められた形を保つために必要なのが型枠です。

型枠の役割

型枠には以下のような重要な役割があります。

  • コンクリートを設計通りの形・寸法に固める
  • 液状のコンクリートを保持する
  • コンクリート表面を滑らかに仕上げる

型枠がしっかりしていないと、コンクリートがはみ出したり、形が歪んだりして、基礎の強度に影響を与える可能性があります。

型枠の種類

住宅の基礎工事で使われる型枠は、主に次のような種類があります。

  •  木製型枠…  最も一般的な型枠で、合板(ベニヤ板)を使用します。比較的安価で加工しやすいのが特徴です。
  • 鋼製型枠…  鉄製の型枠で、耐久性が高く、何度も再利用できます。
  • アルミ製型枠…  軽量で組み立てやすく、表面の仕上がりもきれいになります。

住宅の基礎工事では、コストと作業性のバランスから、木製型枠が多く採用されています。

基礎型枠組み立ての流れとポイント

鉄筋組み立てが終わると、いよいよ型枠の組み立て作業に入ります。

型枠組み立ての手順

  1. 墨出し(位置の確認)… まず、図面に基づいて基礎の位置や高さを正確に墨出しします。
  2.  底盤部分の型枠設置… 基礎の底部分の型枠を先に設置します。
  3.  立ち上がり部分の外側型枠設置… 底盤の外周に沿って、立ち上がり部分の外側の型枠を設置します。
  4. セパレーターの設置… 外側型枠が完成したら、基礎の厚みを均一に保つためのセパレーターを設置します。これは型枠同士の間隔を保つための金具やパイプです。
  5. 立ち上がり部分の内側型枠設置… 最後に立ち上がり部分の内側に型枠を設置します。
  6.  型枠の補強… 型枠が歪まないように、外側からは支柱や筋交いなどで補強します。

型枠工事のチェックポイント

型枠の組み立てが完了したら、以下のポイントをチェックしましょう。

  • 型枠が垂直・水平になっているか
  • 基礎の幅や高さが設計図通りになっているか
  • 型枠の継ぎ目に大きな隙間がないか
  • 型枠がしっかり固定されているか
  • 型枠内部にゴミや落ち葉などが入っていないか

アンカーボルトの設置 基礎と土台を繋ぐ重要な部材

型枠の組み立てが完了した後、コンクリート打設前に重要な工程があります。それは「アンカーボルト」の設置です。

アンカーボルトとは

アンカーボルトは、基礎コンクリートと木造住宅の土台を固定するための金具です。コンクリートが固まる前に埋め込んでおくことで、基礎と建物をしっかりと一体化させる役割があります。

特に地震大国の日本では、アンカーボルトの役割は非常に重要です。地震の揺れによって建物が基礎からずれることを防ぎます。

アンカーボルトの設置位置と基準

アンカーボルトの設置には以下のような基準があります。

  • 間隔:一般的に2.7m以内
  • 位置:土台の継ぎ目や柱が載る部分の近くに設置
  • 出寸法:コンクリート上面からボルトの上端までの長さが適切であること

【アンカーボルト設置のチェックポイント】

  • アンカーボルトの間隔は2.7m以内になっているか
  • ボルトはまっすぐに立っているか
  • 土台の継ぎ目付近や柱の下付近に配置されているか
  • 出寸法は適切か(一般的に40〜50mm程度)
  • 図面通りの本数が設置されているか

基礎コンクリート打設 基礎工事の中心となる作業

型枠の組み立てとアンカーボルトの設置が完了したら、いよいよ「コンクリート打設」の工程に入ります。

コンクリートの種類と品質

住宅の基礎に使用されるコンクリートには、強度や耐久性に関する基準があります。一般的に使用されるのは

  • 設計基準強度… 通常21N/mm²以上
  • スランプ値… 18cm程度(流動性を表す値)
  • 水セメント比… 55%以下(水とセメントの比率)

コンクリートの品質はとても重要です。強度が不足していると、将来的にひび割れの原因になります。

コンクリート打設の手順

  1. 打設前の準備… 生コン車が到着したら、注文通りのコンクリートが届いたか確認します。
  2. 底盤部分への打設… 最初に基礎の底盤部分にコンクリートを打設します。
  3. バイブレーターによる締固め… コンクリート内の空気を抜くために、バイブレーターという振動機を使って締固めを行います。
  4. レベル調整… 底盤部分のコンクリート上面を平らに均します。
  5. 立ち上がり部分への打設… 底盤部分が少し固まってきたら、立ち上がり部分にコンクリートを打設します。
  6. 天端(上面)の仕上げ… 最後に基礎の上面を平らに仕上げます。

コンクリート打設のチェックポイント

コンクリート打設時には以下のポイントをチェックしましょう。

  • 生コン車の伝票で強度や配合を確認
  • コンクリートが型枠の隅々まで行き渡っているか
  • バイブレーターでしっかり締固めているか
  • 基礎天端が水平に仕上がっているか

特に夏場の暑い時期や冬場の寒い時期は、コンクリートの品質に影響が出やすいため、適切な養生が重要です。

養生 コンクリートの強度を確保するための重要工程

コンクリート打設後、すぐに型枠を外すことはできません。コンクリートが十分な強度を得るまでの期間、適切に保護することを「養生」と呼びます。

養生の目的と方法

養生には主に以下のような目的があります。

  • コンクリートが適切な温度と湿度の中で硬化するのを助ける
  • 乾燥によるひび割れを防止する
  • 低温時の凍結を防止する
  • 高温時の急激な水分蒸発を防止する

養生の方法としては

  • 湿潤養生… コンクリート表面に水をかけたり、濡れたむしろなどで覆う
  • シート養生… ビニールシートでコンクリートを覆う
  • 温度管理… 寒冷期には保温マットなどを使う

養生期間の目安

養生期間は気温や湿度によって変わりますが、一般的な目安は以下の通りです。

  • 夏期(気温25℃以上):3〜4日程度
  • 春・秋期(気温15〜25℃):5〜7日程度
  • 冬期(気温5〜15℃):7〜10日程度

養生のチェックポイント

  • 雨水や直射日光から適切に保護されているか
  • 必要に応じて散水などが行われているか
  • 適切な養生期間が確保されているか

養生が不十分だと、コンクリートの強度不足やひび割れの原因となり、基礎の耐久性に大きく影響します。

型枠解体 慎重に行われるべき作業

養生期間を経て、コンクリートが十分な強度を得たら、型枠を解体します。これを「脱型」とも呼びます。

型枠解体のタイミング

型枠解体のタイミングは、コンクリートが自立できる強度に達したかどうかで判断します。早すぎる型枠解体は避けるべきです。

型枠解体の手順

  1. 支持材の取り外し… まず、型枠を支えていた支柱や筋交いなどを取り外します。
  2. セパレーターの処理… セパレーターの処理方法は種類によって異なります。
  3. 型枠本体の取り外し… 最後に型枠本体を丁寧に取り外します。

型枠解体後のチェックポイント

型枠を外した後は、コンクリートの仕上がり状態を確認します。

  • 表面に気泡やハチの巣状の欠陥(ジャンカ)がないか
  • 設計通りの寸法になっているか
  • 基礎が垂直、水平に仕上がっているか
  • 表面にひび割れがないか
  • アンカーボルトの位置や出寸法は適切か

基礎工事の補修と埋め戻し

型枠解体後、必要に応じて基礎の補修を行い、外周部分の埋め戻しを行います。

基礎補修の方法

型枠解体後に見つかった欠陥は、その程度に応じて補修します。

  • 表面の気泡… セメントペーストで埋め込む
  • 小さなジャンカ… モルタルで埋め込む
  • 大きなジャンカや欠損… 特殊な補修材を使用

埋め戻しの目的と方法

基礎の外周部分は、型枠解体後に土で埋め戻します。埋め戻しの目的は、基礎の安定性を高め、基礎周りの排水を確保し、後の外構工事のための地盤を整えることです。

埋め戻し作業は次のような手順で行われます。

  1. 防水処理… 基礎の外側表面に防水モルタルなどを塗布します。
  2. 排水管の設置… 基礎周りに排水管を設置することもあります。
  3. 埋め戻し材の投入… 最後に土や砂などを投入し、適度に締め固めます。

基礎工事にかかる費用と期間を理解しよう

基礎工事における型枠工事とコンクリート打設は費用も時間もかかりますが、家の形と強度を決める重要な工程です。

型枠工事とコンクリート打設の期間

型枠工事からコンクリート打設、養生、型枠解体までの期間は、天候や季節にもよりますが、一般的な住宅(30坪程度)では約1〜2週間かかります。

【工程別の期間目安】

  • 型枠組み立て:2〜3日
  • コンクリート打設:1日
  • コンクリート養生期間:3〜7日(季節により変動)
  • 型枠解体・後片付け:1日

型枠工事とコンクリート打設の費用相場

【型枠工事】 一般的な住宅での総額:約30〜50万円

【コンクリート打設】 一般的な住宅での総額:約20〜40万円

【養生・型枠解体】 一般的な住宅での総額:約10〜20万円

費用に影響する主な要素

  • 基礎の形状… 複雑な形状だと型枠工事の費用が高くなる
  • コンクリートの種類… 高強度コンクリートなど特殊なものは高価
  • 季節… 冬場は凍結防止対策などの追加費用が必要

現場見学時の注意点

基礎工事の現場を見学する際には、以下の点に注意しましょう:

  • 安全第一… 現場は危険な場所です。現場監督の指示に従い、ヘルメットなどの安全装備を着用しましょう。
  • 適切なタイミング… 特にコンクリート打設前と型枠解体後が重要なチェックポイントとなります。
  • 質問は遠慮なく… 分からないことは素直に質問しましょう。
  • 写真撮影… 各工程の写真を撮っておくと後で確認できます。

まとめ コンクリートと型枠が決める家の基礎の質

基礎工事における型枠工事とコンクリート打設は、家の寿命を左右する重要な工程です。型枠によって基礎の形が決まり、コンクリートの品質によって強度と耐久性が決まります。

特に養生期間は、工期を急ぐあまり短縮されがちですが、将来の住まいの安全のためには、適切な期間を確保することが重要です。

施主さん自身が現場に足を運び、工事の進行状況を確認することで、安心して住める家づくりができるでしょう。

次回は、基礎工事の仕上げ段階である「玄関ステップ打設」や「基礎断熱材貼り」などについて解説します。

初心者でもできる!基礎工事のチェックポイント

型枠組み立て時のチェックリスト

□ 型枠はガタつかず、しっかり固定されているか

□ 型枠の内側に木くずやゴミが入っていないか

□ 型枠の継ぎ目に大きな隙間がないか

□ コンクリートを流し込む高さを示す印があるか

コンクリート打設時のチェックリスト

□ 生コン車の伝票の内容を確認したか

□ コンクリートの流し込みは少しずつ、均等に行われているか

□ バイブレーターでしっかり締め固めているか

□ 暑い日や寒い日の特別な対策はされているか

□ アンカーボルトの位置がずれていないか

養生・型枠解体時のチェックリスト

□ 養生期間は適切か(夏場で最低3日、冬場で7日以上)

□ 雨や直射日光からコンクリートは保護されているか

□ 型枠解体後のコンクリートに大きな気泡やハチの巣状の穴はないか

□ 基礎は水平に保たれているか

□ ひび割れはないか

(執筆者:あおちゃん)